産業技術総合研究所は、日本電気スマートエネルギー研究所や宮崎大学と共同で、微細藻類の一種である「ミドリムシ」からの抽出成分を主原料とした「微細藻バイオプラスチック」を開発した。従来のバイオプラスチックや石油樹脂などに劣らない耐熱性と熱可塑性をもつという。
発表によると、このプラスチックは、ミドリムシが細胞内に大量に産生する多糖類「パラミロン」に、同じくミドリムシ由来の油脂成分(ワックスエステル)から得られる長鎖脂肪酸、およびカシューナッツの殻由来の油脂成分「変性カルダノール」を付加して合成した。植物成分率は約70%と高い。
各種物性を測定したところ、衝撃強度については改善の余地があるが、熱可塑性については、従来のバイオプラスチックの「ポリ乳酸」や「ナイロン11」、可塑剤を添加した酢酸セルロース、石油由来のABS樹脂と同等レベルだった。耐熱性(加熱による変形のしにくさ;ガラス転移温度)については、これらのプラスチックよりも優れていることが分かった。
ミドリムシ(ユーグレナ)は、長さ約50µm(マイクロメートル;1µmは1000分の1㎜)、幅約10 µmの微細藻類の一種で、分類学上は動物にも植物にも属する。鞭毛により水中を泳ぎ回ることができる(動物的性質)一方、葉緑体をもつため光合成することができる(植物的性質)。そのため、通常の微生物のようにグルコースをエネルギー源として増殖するほか、太陽光と二酸化炭素をエネルギー源に増殖することもできる。その利用については近年、環境やエネルギー、食品などの分野からも注目されている。
今回の研究は、科学技術振興機構の委託事業「先端的低炭素化技術開発」の研究テーマ「非食用の多糖類を利用したバイオプラスチックの研究開発」の一環として行われた。
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