早稲田大学、東海大学、日立製作所、NEC、KDDI研究所は、災害発生時に自治体が取り組む被災者支援業務を、クラウドサービスを用いて迅速かつ安全に行うことを可能とする情報セキュリティ技術を共同で開発したと発表した。
5者は、2013年1月より、東日本大震災被災地域を対象に自治体関係者の協力を得て、住民等参加型の実証実験を開始する予定。
今回開発した技術は、総務省の委託研究「災害に備えたクラウド移行促進セキュリティ技術の研究開発」のもと開発されたもの。
早稲田大学と日立が開発したのは、平常時の認証方式に依存しない、クラウド向けの柔軟で安全な認証を実現する認証基盤技術で、オープンなネットワークを経由し、ICカード認証を使用しないタブレット端末などを用いた業務システムにも、平常時と同等の情報セキュリティレベルを確保し、適切な認証によって住民情報へのアクセス制御を実現する。
具体的には、被災時に確保可能な認証方式を用いて、その認証結果に加え、利用時間帯、利用場所、利用回線、認証の成功履歴や失敗履歴などの情報と照合することで、総合的に認証レベルを算出するマルチレベル認証技術。今回の実証実験では、指静脈認証方式を用いて、タブレット端末においても情報セキュリティレベルを維持して、住民情報へのアクセスが可能となることを確認する。
NECとKDDI研究所が開発したのは、クラウドを活用した災害関連情報の自動振り分け技術で、災害時にソーシャルサイトなどに投稿される大量の情報を効率的に収集するため、スマートフォンなどの端末側で投稿内容から自動的にラベル付け(例:災害情報、救急情報)を行い、クラウド上のサーバが、ラベルや位置情報、システムの状態などを勘案して最適なシステムに情報の振り分けを行う技術。
また、東海大学とNECは、プライバシー保護型災害対応支援技術を開発した。この技術は、データを暗号化したまま処理する技術で、プライバシー情報などの機微データを活用しつつ同時にこれらの漏洩を防止することに有効だという。
実証実験では、開発した情報セキュリティ技術を活用し、被災時や復興時の業務を想定し、「クラウド向けの柔軟で安全な認証を実現する認証基盤技術」を活用した自治体向け被災者支援システム、「クラウドを活用した災害関連情報の自動振り分け技術」をミニブログに適用した一般住民向け情報発信システム/自治体職員向け情報収集システム、「クラウド上でのプライバシー保護型災害対応支援技術」を活用した住宅斡旋システムの3つのクラウド型実証実験システムを開発。1月中旬から2月上旬にかけて東日本大震災被災地域にて稼働予定で、開発した情報セキュリティ技術の有効性や業務上の有用性を確認する。