島津製作所は1月7日、低沸点から高沸点まで広範囲な揮発性化合物の正確な分析を実現するガスクロマトグラフ用ヘッドスペースサンプラ「HS-20」を発売したことを発表した。
同装置は、容器内で液体あるいは固体試料を一定温度に加温し、気相部分に移行した揮発性化合物をガスクロマトグラフ(GC)やガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)に導入するもの。ヘッドスペースサンプラは簡単な操作で揮発性化合物の分析が可能なため、環境中のVOC成分の分析や医薬品の品質管理など多様な分野で利用されているため、より信頼性の高い分析が求められるようになってきたほか、食品や材料などさまざまな用途に利用される中で、低沸点から高沸点までの幅広い揮発性化合物を高感度に検出し、広範囲な測定対象物についての正確な定性・定量結果を得る事が要求されるようになってきた。
同装置はこうしたニーズに応えるため、より広範囲な揮発性化合物への対応を実現することを目指して開発されたもので、ヘッドスペースでの連続分析におけるデータの信頼性向上のために求められている、吸着性の高い化合物でも流路での残留量を最小限に抑えた低キャリーオーバー性能の実現のために、独自の流路構造とサンプルラインの不活性化処理による吸着量の最小限が図られており、これにより残留性の高い酢酸でも0.0001%以下の低キャリーオーバーを実現している。
また、オーブンは最高300℃まで設定可能で、従来のヘッドスペースサンプラでは困難であった高沸点化合物の分析を可能にしたほか、ヘッドスペースをGCに接続するトランスファーラインの長さを同クラス最短の30cmとしたことから、フタル酸エステル類や環状シロキサンなどの高沸点成分でもGCカラムに効率よく導入されるため、高感度な分析が可能となり、化成品材料の品質管理にも適用可能となっている。
さらに、ヘッドスペースガスを濃縮することで、試料から発生する揮発性化合物の高感度分析が可能なほか、「電子冷却トラップ機能」によりトラップ部を-20℃まで冷却する事で、低沸点の成分も効率よくトラップに濃縮することが可能だ。これにより例えば、臭気成分など幅広い沸点範囲の成分の高感度分析が可能となり、GCMSでのマススペクトルを用いた正確な定性結果や、微量成分の正確な定量結果を得る事が容易になるという。
なお、同装置の価格は標準システムで350万円から(税別)、同社では発売1年間で240システムを国内外に向けて販売したいとしている。