SC12でのCrayの展示の目玉は新スーパーコンピュータ(スパコン)「XC30」であった。XC30はDARPAのUHPCプロジェクトなどの資金を得て、「Cascade」のコードネームで開発が行われてきたものである。また、CrayはSC12でXC30の論文を発表し、Exhibitor ForumでもAdaptive Supercomputing Visionという発表を行い、XC30をアピールしていた。
CrayのAdaptive Supercomputing Vision
SC12においてCrayのCTOのBill Blake氏は、同社のスーパーコンピューティングのビジョンについて発表を行った。
Adaptive Computingというのは、アプリケーションをシステムに合わせるのではなく、システムをアプリケーションに合わせるということで、CPU、GPU、超マルチスレッドと各種のアーキテクチャのプロセサを1つのスケーラブルなシステムにまとめて提供するというものである。そして、アダプティブなアプリケーションやコンパイラは、どのタイプのプロセサが使用可能かを調べ、最適なプロセサで実行するコードを生成するようにする。
そして、これまでCrayには、HPCシステム、ストレージとデータマネジメント、ビッグデータの3つのビジネスユニットがあったが、Approの買収でクラスタソリューションビジネスが加わり、これら4分野をカバーするAdaptive Computingが可能となるという。
このようにアダプティブに処理を割り当てるためには、バンド幅が高く、レイテンシの短いプロセサ間のインタコネクトの存在がカギとなる。これまでもCrayは高性能インタコネクトを開発、使用してきたが、XC30では第3世代のAriesインタコネクトを採用し、性能を高めている。
そして、今回発表したXC30は、柔軟に各種のプロセサが選べ、アダプティブなプログラミングツールも揃っている。また、AriesインタコネクトやCray Linux OSなどはスケーラビリティが高い。さらに、ハードウェアとネットワーク、ソフトウェア、ストレージ、信頼性などスパコンに期待されるものがすべて揃っているという。
ただし、Xeon PhiやNVIDIAのGPUのサポートは予定されているもののサポート時期は発表されておらず、現状ではXC30のプロセサはIntelのXeon E5だけである。
そしてCrayはExaScaleシステムに向けて消費電力、超並列処理、プログラミングの困難性、耐故障性の分野にフォーカスして研究開発を行っているという。