富士通研究所は12月13日、来店客の行動をモデル化することで店舗の複雑な混雑状況を可視化するシミュレーション技術を開発したと発表した。
スーパーマーケットやドラッグストアなどの小売店では、レジに並び支払いを終えるまでの効率を上げ人員コストを削減するために、新しいタイプのチェックアウトシステムの導入が進められているが、従来は、店舗内の混雑状況を検討する際に、レジの台数や来店客の人数を変えることで待ち時間を計算する待ち行列の計算を用いていた。
実際の店舗において混雑状況の変化を観察したところ、時間帯によってすべてのレジに同程度の混雑が生じる場合や空いているレジと混んでいるレジに分かれる場合があることがわかったという。
同社ではまず、技術開発のための課題として、社会シミュレーションを応用し、スーパーマーケットやドラッグストアなどの小売店において、時間帯によってすべてのレジに同程度の混雑が生じる場合や空いているレジと混んでいるレジに分かれるという混雑状況を再現。混雑状況をすべて再現するために来店客の行動ルールを明らかにし、1つの来店客行動のモデルを作成した。
次に、来店客の3つの行動ルール「限定行動:来店客に視野を持たせ、一定の範囲内のレジだけを到達可能範囲と限定する」、「評価行動:到達可能範囲内のレジの中で、各レジの待ち人数や距離を評価する」、「回避行動:複数の来店客間での干渉を避けることで、移動経路を変更する」を組み合わせ、混雑状況のパターンを再現した。
さらに、この行動ルールをモデル化し、混雑状況の変化をシミュレーションすることで、現実の店舗で観測された混雑状況を再現した。
今回、開発した同技術は、シナリオ分析と呼ばれる技法を用いてレジの台数や配置、開閉のタイミングなどの条件を変化させ、可能性のある様々な混雑の様子を可視化。可視化された結果をもとに、店舗で生じる様々なリスクや可能性をあらかじめ検討し、レジの配置変更やレジ開閉のタイミング、案内係りによる顧客の誘導方法などを議論することができ、より多くの情報に基づく質の高い意志決定が可能になるという。
同技術を用いた、レジの配置の影響を分析した例として、中央の商品棚から来店客が多く出現する場合として、「レジを左に寄せて配置」と「レジを店舗中央付近に配置」の2通りのレイアウトが与える影響を複数回のシミュレーションを行い分析したところ、来店客のチェックアウトに要した平均時間は、「レジを店舗中央付近に配置」の方が短いという結果となったという。
このときの混雑状況を分析すると、商品買い上げ点数が多い来店客が中央のレジに集中することが長い時間を要する原因であり、早めに他のレジへの誘導が必要であることがわかったという。
同社では、同技術は起こりうる混雑状況を詳しく把握でき、改善策の検討も可能になるとしている。