ロームは12月12日、パワーコンディショナなどのインバータやコンバータ向けにSiC-MOSモジュール(定格1200V/180A)の量産を開始したことを発表した。

同社は2012年3月よりパワー半導体素子すべてをSiCで構成したフルSiCパワーモジュール(定格1200V/100A)の量産を開始しているが、小型モジュールサイズを維持したままでの大電流化に対する要望も多く、その開発が求められていた。しかし、通常、大電流化のためにはMOSFETの搭載個数を増やすなどの対応が考えられるが、整流素子であるダイオードとのセットでの開発となるため、サイズの小型化が難しい問題となっていた。

今回、新たにボディダイオードの通電劣化を解消した第2世代のSiC-MOSFETを採用することで、整流素子であるダイオードを必要としないSiCパワーモジュール(SiC-MOSモジュール)を開発。これによりSiC-MOSFETの搭載面積を増加させることが可能となり、小型モジュールサイズを維持したままでの大電流化を実現できるようになった。

SBDレスSiC-MOSモジュールの外観

SBDが不要となったことから従来のフルSiCモジュールに比べ、小型化が可能となった

Si-IGBTでのスイッチング損失がなくなるため、全体の損失を55%低減することが可能となった

内蔵されるSiC-MOSFETは、結晶欠陥に係わるプロセスとデバイス構造を改善することで、ボディダイオードをはじめ信頼性面での課題をすべて克服することに成功したほか、ショットキーバリアダイオード(SBD)を削除しても従来品と同等のスイッチング特性を実現。Si-IGBTで見られていたテイル電流が発生しないため、損失を50%以上低減することが可能となった。また、Si-IGBTでは不可能であった50kHz以上のスイッチング周波数も可能となるため、周辺機器の小型・軽量化も実現できるようになるという。

さらに、一般的にSi-IGBTデバイスは逆方向に導通させることができないが、SiC-MOSFETはボディダイオードで常に逆導通が可能なほか、ゲート信号を入れることによりMOSFETの逆導通も可能であるため、ダイオードのみの場合に比べて、より低抵抗にすることができるようになる。これらの逆導通特性により、1000V以上の領域においても、ダイオード整流方式に比べて高効率な同期整流方式の技術を採用することが可能になるという。

Si-IGBTではできなかった逆導通がSiC-MOSFETでは可能。これにより低抵抗化が可能となる

加えて、一般的な製品は20時間を超えるとオン抵抗が大幅に増大していたが、同製品では1000時間以上の通電時間でも オン抵抗が増大しないことも確認されたという。

通電時間が1000時間以上でも特性劣化が生じない