ルネサス エレクトロニクスは12月10日、同社が2012年8月2日に公表した2013年3月期通期の連結業績予想について、売上高を480億円の減少となる8200億円、半導体売上高を同510億円減となる7600億円へと下方修正したことを発表した。
これは欧州の債務・金融問題の長期化、中国をはじめとする新興国経済のさらなる減速、日中関係の不透明化による需要への影響などにより、半導体売上高が想定を下回る見込みであること判断したもので、主事業であるマイコン事業、アナログ&パワー半導体事業、SoC事業の3製品群とも、前回の想定を下回る見込みだという。
ただし、同社では半導体売上高の減少による利益減が見込まれるが、生産効率化やさらなる費用削減施策を進めることで、営業損益、経常損益、当期純損益については、前回予想から変更はしないとしている。
また同社は同発表に併せて、現在同社が進めている収益基盤および財務基盤強化のための諸施策の進捗状況についてもコメントしている。
同社は収益基盤の強化を目指して、2010年4月1日付の事業統合以降、統合効果として高いシェアを有するマイコンを柱とする事業ポートフォリオの最適化や生産構造対策を推進し、2年間で約20%の固定費削減の実現などを図ってきたが、2011年3月に発生した東日本大震災や世界的な経済不安の影響から、2012年7月3日に早期退職優遇制度の実施と国内生産拠点の再編を柱とする事業・生産構造対策を発表。早期退職優遇制度については、同年10月16日に7446名の応募があったことを明らかにしていたが、同10月末で全員が退職したとする。
また、国内生産拠点の再編については、ルネサスハイコンポーネンツ(青森工場)などをアオイ電子へ譲渡することで合意がなされているほか、その他の工場などについても計画どおりに進捗しているとのことで、今後も、筋肉質な組織・運営体制の構築に努めるとともに、現経営体制の責任の下で、一層の競争力強化に向けた人員構成の最適化などを推進していく予定としている。
さらに財務基盤の強化としては、同年9月28日に同社大株主3社および主要取引銀行から計970億円の新規資金調達を実施したほか、主要取引銀行をアレンジャーとして、長期安定資金確保のため、短期借入金を長期化する総額1611億円のシンジケートローン契約を締結するなどの資金確保を実施していたが、12月10日付で世界経済や日本市場の急激な環境変化に耐えられる財務基盤を確立し、業績の回復に向けた重点分野への成長投資を行うために、産業革新機構、トヨタ自動車、日産自動車、ケーヒン、デンソー、キヤノン、ニコン、パナソニック、安川電機を割当先とする第三者割当による総額1500億円の株式募集(第三者割当増資)を実施することを明らかにした。
同社では、こうした収益基盤および財務基盤の強化策により、市場の変化に対応し、顧客にとって付加価値の高いキットソリューションを構築するために、強みであるマイコンとのキットソリューションに必要不可欠なアナログ&パワー半導体を強化するとともに、SoCの競争力の向上に努めていくとするほか、キットソリューションに加え、アプリケーションごとに共通して使用できるIPやOSなどのソフトウェアをプラットフォームとして提供し、顧客における開発期間の短縮やコスト競争力、生産性の向上に貢献し、新市場での成長を実現していくとのことで、今回の第三者割当増資によって調達される資金を、5つの具体的な成長投資に充当し、強化分野における売上成長を確実にすると共に安定的に収益を確保し、企業価値および株主価値の向上を目指していくとしている。
5つの成長分野は以下の通り。
- マイコンの先端プロセス開発および開発基盤の標準化に係る投資(400億円:支出予定時期は平成25年6月~平成29年3月)
- 生産(試作・量産)に係る設備投資(200億円:支出予定時期は平成25年6月~平成29年3月)
- 自動車向け半導体におけるソリューション投資(400億円:支出予定時期は平成25年6月~平成30年3月)
- 産業向け半導体におけるソリューション投資(400億円:支出予定時期は平成25年6月~平成29年3月)
- 経営基盤再構築のための開発投資(100億円:支出予定時期は平成25年6月~平成28年3月)