12月6日、東京都港区の品川プリンスホテルにて、データインフラをテーマにした技術カンファレンス『NetApp Innovation 2012 Tokyo』が開催された。

同カンファレンスでは、米NetAppの経営戦略や同社製ストレージに組み込まれた最新技術、さらにはパートナー企業が提供するソリューションなど、さまざまな発表が行われ、詰めかけた来場者に新たな選択肢を提示した。

本稿では、基調講演の内容を中心に、同カンファレンスの模様をお伝えしよう。

20年間の実績を振り返る

米NetApp ワールドワイド・フィールド・オペレーション担当取締役副社長のロブ・サーモン氏

カンファレンスは、米NetApp ワールドワイド・フィールド・オペレーション担当取締役副社長のロブ・サーモン氏による講演により幕を開けた。

『創業20年の歴史』と題する講演を行ったサーモン氏は、同社がこの20年間で積み重ねてきた実績を振り返った。働きがいのある会社について調査する「Grate Place to Work」でグローバル3位、国内2位を獲得したほか、米FORTUNE誌による同様の調査でも6位に選ばれたことを説明。さらに、ストレージOSの分野でシェアNo.1を獲得し、米国政府のNo.1ストレージベンダーの立場にあることや、NASの分野で数々のイノベーションを実現したことも紹介した。

特にイノベーションに関しては、単純なファイルサーバから始まった同社製品が、テクニカルコンピューティングやビジネスアプリケーションの分野へと進み、Storage Efficiency、共有仮想インフラなどのコンセプトで新技術を取り入れて収益を拡大。現在は62億ドル規模のビジネスにまで成長し、アジャイルデータインフラ、クラウド、ビッグデータといった分野への対応に力を入れていることを明かした。

NetAppの主な業績

さらに、同氏は、NetAppの現在の取り組みとして、最新OS「Data ONTAP 8」により仮想化を基盤とした統合インフラを柔軟(アジャイル)に管理/拡張できる環境を提供する一方で、ビッグデータ分析やビデオ配信などにも対応するため、専用ワークロード向けのハイパフォーマンスストレージ「Eシリーズ」も提供していることを強調。顧客の多様なニーズに幅広く対応していることを説明した。

サーモン氏は、最後に、「今の時代に成功する企業は、イノベーションを起こすだけでなく、業界のリーダー格でいなければならない。NetAppは、多数在籍する優秀な人材と、充実したパートナー企業によってこれを成し遂げている」と説明したうえで、「もっともこれまでの成功は過去のもの。成長するためには、毎日成功を勝ち取っていかなければならない」とのコメントを残し、兜の緒を締めるかたちで壇上を後にした。

日本法人の業績

ネットアップ 代表取締役社長の岩上純一氏

続いて登壇した、日本法人 代表取締役社長の岩上純一氏は、国内の業績や販売戦略を紹介した。

岩上氏は今年10月に、前任者のタイ・マッコーニー氏を引き継ぐかたちで代表取締役社長に就任。日本IBM 事業部長、SAPジャパン 製造業担当バイスプレジデントを経て、2009年に同社に入社。9月まで営業統括本部長を務めていた人物である。

その岩上氏は、ストレージベンダーの企業パワーを測る指標について触れ、「ストレージというと、どうしても出荷製品の総容量など、データ容量で測る傾向にあるが、個人的に大事にしたいのはビジネスプロセスに対していかに寄与できているかという観点」との見解を提示。続けて、「そういった意味では、ストレージOSのシェアNo.1というのは、私にとって非常に誇れる数字」と述べた。

また、国内の業績についても発表した同氏は、この2年間、前年比19%増、27%増と売り上げを伸ばしており、5月から始まった今年度も、上半期は前年度20%増を遂げていること紹介。協力パートナーに改めて感謝の意を示したうえで、ユーザー企業のリクルートテクノロジーズ CTO 米谷修氏や、同じくユーザー企業でありパートナーでもある東芝の執行役上席常務 錦織弘信氏を壇上に招き、NetApp製品がビジネスに貢献している実情を来場者に伝えた。

日本法人の戦略と業績。すべてのセグメントで高い成長を遂げている

NetApp製ストレージに組み込まれた最新技術

米NetApp プロダクト・アンド・ソリューション・マーケティング 副社長のブレンドン・ハウ氏

基調講演の最後には、米NetApp プロダクト・アンド・ソリューション・マーケティング 副社長のブレンドン・ハウ氏が、テクノロジー面から同社の取り組みを詳しく解説した。

同氏は、米NetAppにおける現在注目の技術として、「Cluseterd Date ONTAP」や「Flashメモリへの対応」をピックアップした。

これらのうち、Cluseterd Date ONTAPは、仮想化技術を用いて基盤のコントローラとストレージをハードウェアから分離する技術で、システムを停止することなく、リソースプールを自由に拡張、再配分することができる。さまざまなディスクタイプ、コントローラに対応し、他社製ストレージアレイもサポート。数千のボリュームをホスティングでき、ペタバイトサイズのネームスペースにも対応するという。アクセス頻度の低い「コールドデータ」を安価なディスクに移し替えたり、古くなったハードウェアを更新したりする際にも、システムを稼働し続けられるといった利点がある。

すでに対応製品がリリースされており、導入事例も増えているという。

Cluseterd Date ONTAPの原理

一方のFlashメモリへの対応に関しては、FASシリーズとして、ハイパフォーマンスが求められる環境向けに3つのシリーズを提供。キャッシュを中心にさまざまなシステムですでに使われており、頻繁にアクセスされるデータに提供することでコスト効率も高められるという。

ハウ氏は、今後もイノベーションを引き起こす技術を順次提供していくことを強調し、講演を終えた。

多彩なパートナー企業ソリューション

NetApp Innovationでは、講演や展示ブースにおいて、パートナー企業のソリューションも多数紹介された。

基調講演内でネットアップが、Hadoopソリューションベンダーとして知られる「Coloudera」およびSIerの新日鉄住金ソリューションズと、Hadoopソリューションの提供で提携したことが発表されたほか、展示ブースや個別セッションでは、親和性の高い仮想化技術を提供するMicrosoft、VMware、Citrixや、NetApp製NASのOEM提供を行っている富士通らが、自社ソリューションの詳細を解説した。

なかでも富士通は、NASに対してさまざまなテクロジーを組み合わせ、信頼性の高い技術サポートを提供するなど、積極的な取り組みを展開しており、別レポートで改めて取り上げている。そちらもぜひご覧いただきたい。

富士通ブースの様子


ETERNUS NR1000F seriesの詳細はこちらのストーリーで