サッポロビールは12月5日、ビール原料のホップに含まれる苦味成分「フムロン」にRSウイルス感染の予防効果があること、ならびにRSウイルス感染による炎症の緩和効果があることを発見したと発表した。同成果は同社ならびに札幌医科大学医学部の澤田典均 教授、小島隆 准教授らの共同研究によるもの。
RSウイルスは、主に乳幼児に感染率が高く、秋から春にかけてウイルス感染が流行することが知られている。予防のためのワクチンや効果的な治療法がない上に、重篤な呼吸器疾患に至るケースもある。ただし、成人の場合は、ウイルスに感染しても軽い風邪程度の症状でおさまることが多いため、ウイルスの感染に気づきにくいと言われている。そのため、RSウイルスは家庭の内部で感染していくことが考えられ、乳幼児だけでなく成人も日常的にウイルス感染の予防に注意する必要がある。
今回の研究では、RSウイルスの最初の感染経路である、鼻粘膜におけるウイルス感染を予防することが重要であると考え、ヒト由来の鼻粘膜上皮細胞を用いた検証が行われた。
具体的には、RSウイルス感染に対するフムロンの予防効果を検証するため、RSウイルスに感染したヒトの鼻粘膜上皮細胞にフムロンを添加し、無添加の細胞とRSウイルス感染の指標である「RSV/Gタンパク質」の発現量を比較したところ、無添加細胞では感染24時間後に同タンパク質の発現量が上昇したのに対し、フムロンを添加した細胞では、24時間が経過しても発現が抑制されることが確認されたという。
また、免疫蛍光染色により、細胞のRSV/Gタンパク質を赤色に染色したところ、無添加細胞ではRSウイルスの感染で赤く染まったが、フムロンを添加した細胞では、染色が抑制されていることが確認されたという。
これらの結果から、フムロンに鼻粘膜上皮細胞におけるRSウイルス感染の予防効果があることが判明。さらに、RSウイルス感染による炎症に対するフムロンの緩和効果の検証のため、炎症反応の指標である「IL-8」の鼻粘膜上皮細胞における分泌量を測定した結果、無添加細胞では、ウイルス感染後、時間経過と共に分泌量が増加するのに対し、フムロンの添加細胞では、時間が経過しても分泌量が増加しないことが確認された。
この結果から、フムロンにRSウイルス感染による炎症を緩和する効果もあることが判明し、これらを踏まえると、日々の生活でフムロンを摂取することで、RSウイルスに対して感染しにくい身体づくりに貢献することが期待できると研究グループでは説明する。
そのため研究グループでは今後、ホップ成分であるフムロンのRSウイルスに対する効果メカニズムの検証を進めていくと共に、食品や飲料への利用を検討していくとするほか、ビール原料の成分による様々な健康機能についての研究開発を進めていくとする。