大幸薬品は12月5日、同社の除菌・消臭製品「クレベリン」の成分である「二酸化塩素分子」が、インフルエンザウイルスの感染を抑制するメカニズムを解明したと発表した。同成果の詳細は2012年11月発行の英国ウイルス学専門誌「Journal of General Virology」に掲載された。

インフルエンザウイルスの表面タンパクであるヘマグルチニンに二酸化塩素が作用すると、ヘマグルチニンに含まれるアミノ酸配列153番目のトリプトファンと二酸化塩素が反応し、このトリプトファンが別の物質に変化する。

その結果、ヘマグルチニンの立体構造が変化をもたらし、宿主細胞の受容体との結合が阻止され、インフルエンザウイルスの感染が起こらないことが確認された。

研究チームでは、ヘマグルチニンはインフルエンザのワクチンによって体の中にできる抗体が作用する部位であり、そこに二酸化塩素分子が反応することで、ウイルス感染が起こらなくなった今回の成果を受けて、二酸化塩素はワクチン同様にインフルエンザウイルスの感染を阻止することができるものと考えられるとするほか、今回の研究ではH1ウイルスを用いたが、強毒性インフルエンザであるH5N1ウイルスでも相同性のアミノ酸配列が確認されたとしている。

なお、研究チームは今後も主要な研究テーマの1つとして、さまざまなウイルスや細菌、アレルゲンなどに対する二酸化塩素の有用性の検討をはじめ、物性の基礎的研究や安全性ならびに実生活に基づいた研究を続けていくとしている。

インフルエンザに感染する仕組み。無防備な状態において、インフルエンザウイルスは細胞内に侵入し、インフルエンザ感染へとつながる

二酸化塩素によって無力化されるインフルエンザウイルス。インフルエンザウイルスの表面に存在するヘマグルチニンに二酸化塩素が作用すると構造に変化をもたらす

インフルエンザウイルスが細胞に侵入できない様子。ヘマグルチニンの構造が変わったことにより、無力化されたインフルエンザウイルスは細胞内に侵入することが出来なくなるため、感染が起こらない