プロダクトデザインにおいて、3DCGはどのような役割を担っているのだろうか。2012年12月6日に都内にて開催されるセミナー『3DCGとプロダクトデザイン』で講師を担当するデザイナー 米谷芳彦氏に話を訊いた。

米谷芳彦
デザイナー 。デザイン学校を経て企業所属デザイナーとして10年間勤務。国内外有名ブランドの製品デザイン・開発業務、広告関連のディレクションを担当。企業所属時より、Shade/3DCGを駆使した広告制作を開始。 1998年にアイディー.アーツを設立。独立後も国内外ブランドの製品デザインを担当すると共に、大手商社や建築関連企業などのブランディングデザインを多数手掛ける。ブランディングデザイン業務として新商品のデザイン開発、新規事業提案や戦略デザイン、Webディレクションやソフトウェアのデザイン設計までを総合的に対応。また、3DCGのパワーユーザーとして、広告制作や映像 製作なども多数手掛けており、この技術を応用した、営業ツール(ソフトウェア)などの開発も得意としている。2012年には、建築設計事務所を設立。アイディー.アーツの活動と並行し、設計事務所にてアートディレクション&プランナーとしても活動中

――米谷さんはデザイナーとしてどのような案件を手がけているのでしょうか。

米谷芳彦氏(以下、米谷)「プロダクト系が中心です。デザインする物の幅は広いのですが、デザイナーとしては、腕時計など工業製品が多いです。それ以外にも、宝飾品や家電、家具のデザイン、住宅デザインなど建築関係の仕事も担当しています」

――デザインだけでなく、ブランディングデザイン、システム開発などもされていますが、単にアイテムをデザインするのと、Webサイトの構築提案やシステム開発などの業務では、大きな違いがあると思います。仕事として取り組む場合、大きな違いはあるのでしょうか。

米谷「どちらでも案件に対するテンションは同じです。バラバラのように見えている業務でも、リンクしてくる部分があります。どちらも広い意味でデザインの範疇ですね」

――米谷さんはいつ頃から、3DCGを仕事で使用するようになったのでしょうか。

米谷「私は20年前、メーカーで工業製品のデザインをしていたのですが、その時期に3DCGを始めました。私自身、ハリウッド映画などで使われるCGに興味があったので、積極的に勉強を始めました。当時の状況として、3DCGはとにかく時間とお金がかかるものでした。3DCGを描くためのMacとShadeの導入だけで、500万円くらいかかりました」

――当時、デザインの分野で、3DCGはどのような状況だったのでしょうか。

米谷「それまではデザインの世界では3DCGはあまり使われていなくて、手描きがメインでした。15年くらい前からデザインに対する要求がシステマティックになっていったという印象があります。建築だけでなく、製造にもCADが使われることが多くなってきていた時代ですね」

――作業効率的に3DCGはどうでしたか。

米谷「当時は時間がかかって効率の悪いものでした。デザインもまだ手描きのほうが圧倒的に効率は良かったのですが、将来的には、3DCGがメインになると思っていました。やっと1990年代末頃から、プロダクトデザインの分野で、手描きよりも3DCGのほうが効率が良いと実感できるようになってきました」

米谷氏がプロダクトデザインのために描いた3DCG

――プロダクトデザインにおける3DCGのメリットとは何でしょうか。

米谷「クライアントに対して、そのアイテムを現実にあるように見せることができるという部分ですね。これまでは、手描きのイラスト、それがレンダリングした3DCG、いまでは、立体出力して実際に触ることのできるサンプルを作れます。たとえば、製品のデザインを提案するのに、昔は手描きのイラストをクライアントに見せていました。今では、完成品のデータを3DCGで作成して、それを立体出力して、ほぼ実物と同じ物を触らせることもできます。クライアントに伝わる強さや確かさは、まったく違うという実感がありますね。立体でなくとも、3DCGの効果は実感できます。建築デザインに関するエピソードなのですが、私が3DCGで描いたデザイン画を見たクライアントが、ずっとそれを実際の写真だと思っていたということもあります」

――米谷さんはセミナーで使用する3DCGツール「Shade」に関して、どのような印象をお持ちでしょうか。

米谷「Shadeは良くも悪くも3DCGツールとしては大雑把な部分があると思います。それが初心者の人にとっては良い部分といえるので、セミナーでは、それを伝えられたらと思います」

――最後に、セミナーに興味を持っている方や、クリエイターを目指している人にアドバイスをお願いします。

米谷「私は3DCGだけでなく、色々なことをやっています。それは、今の時代のデザイナーは色々できないと生き残れないからです。ツールの使い方など技術的なことだけでなく、それを強くセミナーでは伝えたいですね。ひとつのことしかできないと、仮に仕事を受注しても、それで終わってしまいますが、色々でききると仕事の幅が広がります。たとえば、僕の場合、ある企業のカタログを作りながら、同じ企業のシステムを開発するなどということもやっています。その中で、自分の得意分野に仕事を引き寄せるケースもあります。3DCGとは関係ない案件でも、『3DCGを使うことで、こういうコンテンツを作れますよ』という提案をして、それで仕事が拡がる場合もありますから」

3DCGという表現手法を駆使してデザイナーとして活躍する米谷氏が、その創作テクニックや心得をたっぷりと披露するセミナー「3DCGとプロダクトデザイン」が2012年12月6日 都内にて開催される。興味のある方は、参加してみてはいかがだろうか。セミナーの詳細はこちらから。