エネコープは12月3日、牛糞尿、食品生ごみにBDF残渣(グリセリン)を適量混合し、バイオガスを高効率かつ低コストに製造する技術を確立し、北海道七飯町に試験プラントを完成させたことを発表した。

同成果は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と同社が2011年から実施している「戦略的次世代バイオマスエネルギー利用技術開発事業(実用化技術開発)/地域共同有機マスを用いたエネルギー最適回収方法及びエネルギー最適利用方法の確立」によるもの。

近年の北海道地区におけるメタン発酵によるバイオガス製造プラントは畜糞尿を原料に行うことが主体であり、糞尿処理としての機能が優先的となりエネルギー取得に関しては2次的要素となっていた。また、特定地域においては、これら糞尿が土壌や河川の汚染を引き起こす原因となる場合もあり、次世代バイオガス製造プラントはこうした問題を解決しつつ、再生可能エネルギーの確保とCO2削減、および経済的自立を兼ね備えることが求められている。

しかし、これまでのエネルギー確保が目的の生ごみを原料としたバイオガス製造プラントでは、メタン発酵時に発生する残渣の消化液や発生したバイオガスの精製などにかかる費用が大きな課題となるほか、糞尿処理を主体とした畜糞バイオガス製造プラントでは、バイオガスの発生量こそ期待はできるもののプラント運営の経済的な自立が課題となっていた。

今回の研究は、これらの課題を解決するために発酵管理の容易さと消化液の液肥利用が容易である牛糞尿と、バイオガスの発生量増加が見込める食品生ごみとBDF残渣(グリセリン)とを混合して利用するメタン発酵技術の確立を行おうというもので、バイオガスの精製に純酸素を用いた生物脱硫システムを確立することで低コスト化を図るという。

これにより廃棄物として発生するバイオマス原料14.5t/日(搾乳牛糞尿10.0t、生ゴミ3.0t、粗製グリセリン数%)を利用した場合、680m3/日(通常の20%増)のバイオガス製造が可能となるほか、従来と比較して脱硫剤の使用量を70%削減することが見込まれるという。

なお、今回建設された七飯町の施設で製造されるバイオガスは、ガスとして使用されるだけではなく、発電や温熱資源として活用することが可能であるほか、バイオガス製造後に残る液肥(圃場への散布剤)を耕地・草地に還元することで化学肥料や農薬使用量の軽減を実現することができるため、有機野菜などの栽培にも貢献が可能だという。そのため研究グループでは、この技術を用いることで、これまで処理業者へ委託し、中間処理(焼却)を経て最終処分(埋立)を行っていた廃棄物からバイオガスを製造し有効利用を行うことが可能となり、将来的な地域循環型社会のモデルケースになることが期待されるとコメントしており、試験プラントにより長期運転による季節変化の影響などの検証を進め、高効率かつ低コストなバイオガス製造技術の確立に向けた取り組みを進めていくとしている。

今回のバイオガスの高効率かつ低コストの研究開発フロー