ファンケルは、粘着テープ1枚を肌に貼り付けて角層を取り、その角層からタンパク質を抽出し、内部に含まれるダメージに応じて増加するタンパク質「HSP27」の量を測る方法を確立したことを発表した。

同成果はの詳細は2012年10月15日~18日にかけて南アフリカ共和国にて開催された「第27回 IFSCC Congress」にお発表された。

同社は、これまでの研究により、紫外線や化粧品の添加物などの肌ストレスの影響による肌機能低下に関する基礎研究や肌機能の低下を抑え、素肌の美しさを高めるための研究の一環として、肌細胞や三次元皮膚モデルを使い、肌ストレスを受けることで皮膚内に生じるDNAダメージを視覚的に確認する手法として、DNAダメージに応じて増加するタンパク質「HSP27」を測定する技術を確立してきたほか、「マルビジン含有花エキス」が、そのダメージが修復することなどを確認してきた。

今回の研究では、実際にヒトの肌に刺激を与えた時に、角層中のHSP27量が増えるかどうかの確認が行われた。具体的には、まず被験者の背中に赤く日焼けする程度の紫外線を照射し、角層中のHSP27量を測定したところ、増加が確認された。

角層中のHSP27量を指標とした肌ストレス測定のイメージ図

次に、角層の深部のHSP27量の変化を調べ、表層の角層と比較したところ、界面活性剤で刺激した場合、角層深部では4日後にHSP27が大きく増加し、表層の角層は7日後からHSP27が増加することが確認され、このことから、HSP27はストレスにより肌内部で増加し、それが皮膚のターンオーバーと共に肌表面の角層中に現れてくることが示唆され、これにより角層中のHSP27 の量は、肌がストレスを受けることで増大することが確認されることとなった。

界面活性剤刺激後のHSP27の変化

また、角層HSP27量の個人差を測定し、日常生活におけるストレスの蓄積を評価することができるかを検討するために、175名の被験者の頬、腕(内側)、臀部(尻)の角層中のHSP27量を比較したところ、頬のHSP27量は腕や尻に比べて10倍以上高く、日常的にストレスを受けやすい部位でHSP27が高い状態であることがわかった。さらに、約350名の成人女性(20~79歳)の頬部から採取した角層中のHSP27量を測定し、アンケートによる肌質や生活習慣(生活の中でストレスを受ける可能性)の調査結果とHSP27レベルの関連を解析したところ、HSP27レベルが高い人は低い人に比べて、化粧品や汗、マッサージなどの物理的刺激によって赤みやかぶれを起こした経験が多い、つまりストレスを受けると肌のダメージになつながりやすい人が多いことが判明した。

この結果から、粘着テープを用いて採取した角層中のHSP27量を測定することで、肌を傷つけずに、紫外線、界面活性剤、一部の化粧品成分などの日常的なストレスによる肌ダメージを評価できることが示された。

部位ごとのHSP27量

加えて、これらの外的なストレスの影響を軽減できるのかどうか検討を実施。界面活性剤で刺激を与えた後、抗酸化剤を配合したクリームを用いてスキンケアを行ったところ、界面活性剤刺激によるHSP27量の上昇を抑制することが確認されたという。これにより、ストレスの蓄積を防止できることが示唆され、この結果から、抗酸化クリームの使用によりストレスの蓄積を防ぎ、角層中のHSP27量が低下することが確認されたという。

抗酸化クリーム塗布によるストレス除去

今回の成果は、粘着テープ1枚で採取できるヒトの角層に含まれるHSP27を測定するだけで、個人によって異なる、ストレスへの反応性の違いを評価することを可能とするもので、これによりヒトの肌において、肌ストレスによるダメージを測定する技術が確立されたこととなると研究チームでは説明している。