将棋や囲碁の棋士の強さの秘密と考えられている優れた直観能力は、脳の尾状核の活動の強さにあり、かつ訓練によって強まることが、理化学研究所などの研究チームにとって確かめられた。

同研究所脳科学総合研究所の田中啓治・認知機能表現研究チームリーダーらは、伊藤毅志・電気通信大学大学院情報理工学研究科助教、富士通、富士通研究所、日本将棋連盟と共同で、将棋棋士の脳の神経回路の情報処理メカニズムを調べ、人間に特有の直感思考の仕組みを解明する研究プロジェクトを5年前から進めている。

研究は、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で棋士の脳の活動を観察する手法を用いた。これまでに、プロ棋士が持つ優れた直観的思考能力の基礎は尾状核を含む神経回路の利用にあることを突き止めている。

今回は、将棋の経験がない男性20人(22~24歳)に、将棋を簡略化した「5五将棋」を4カ月間にわたってコンピュータープログラムを相手に毎日、指してもらった。さらに次の一手を考え出す直観的思考に関わる脳活動を調べるために、5五将棋の詰め将棋問題も与えた。

この結果、訓練初期、直観的思考課題に取り組んでいる時には、前頭前野背外側部を含む大脳皮質のいくつかの場所が活動することが分かった。これらの活動の分布と強さはその後もほとんど変わらない。しかし、訓練を積むにつれて尾状核の活動が現れ、その神経活動の強さは、直観的思考課題に対する正答率の上昇に応じて高まることが分かった。

一方、平均正答率と神経活動の強さには人によって大きなばらつきがみられた。興味や真剣さなど取り組み方の違いによる可能性があることから、「訓練方法によって直観的思考回路の発達を促す効率的な手法を、今後の研究で見つけたい」と研究グループは言っている。

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