オフィスで利用しているFAXが古くなり、紙詰まりの回数が増えてきた。元々、8年前に中古で購入した複合機だから、よく働いたといえるだろう。最近ではFAXを使う機会は、かなり少なくなってきたが、それでも無くすわけにはいかない。使う頻度は少ないが、業務上必要なときもある。
しかし、複合機に新しいFAXオプションを付けるにしても、FAX専用機を購入するにしても、10万円近くの費用がかかる。めったに利用しないものにそんなにコストをかけるのか、悩みどころだ。
そこで今回は、最近注目されているクラウド型のサービスに着目し、FAX機を使用せずに利用できるインターネットFAXの導入を検討。初期費用なしで使えるNTTコミュニケーションズの「BizFAX ストレージ&リモート」を導入してみることにした。クラウド型のFAXは従来のFAXと何が違うのか? 使い勝手をレポートする。
クラウド上でデータを管理
「BizFAX ストレージ&リモート」は、ストレージという名前からわかるように、FAXデータをクラウド上に保存できるインターネットFAXサービスだ。FAXサーバがクラウド上にあるので、インターネット環境さえあれば、パソコンでFAXを送受信することができ、外出先でもモバイルPCやスマートフォン、携帯電話等を使って受信FAXを確認できる。
インターネットFAXというと、インターネット回線に接続されたPCやスマートフォン同士でしか送受信できないように想像されるかもしれないが、電話回線に接続された従来のFAX機との送受信も可能だ。
「BizFAX ストレージ&リモート」の月額基本料金は1,050円。NTTコミュニケーションズのWebサイトから申し込むと、初期費用はかからない。契約すると、「050」で始まる専用のFAX番号がもらえる。
050IP電話の番号なので、利用料金は距離に関係なく、日本全国どこに送っても3分8.4円。これまで、大阪のライターと原稿をFAXでやり取りすることがあり、1回あたり30枚程度になることもあった。従来のFAXであれば、3分で84円かかっていたが、今後は3分8.4円で済む計算だ。スマートフォンや固定電話の通話料は気にしていたが、FAXでも意外に料金を下げられることがわかった。
機器や回線の手配が不要、Web申し込みで即日利用可能に
Webからの申し込みの場合、申し込んだその日から利用できる。Webの申し込みフォームで、管理画面にログインするためのパスワードを指定するほかは、住所、氏名といったユーザー情報の登録と決済用のクレジットカード情報の登録を行うだけで完了。従来のFAXと比べると、機器の購入や回線の手配が要らない分、導入は圧倒的にスピーディーで手軽だ。申し込み完了後、すぐに利用するFAX番号が記載されたメールが届いた。
メールが届いたら、Web上の設定用ページでログインし、各種利用設定を行う。FAXを受信したことを知らせる「おしらせメール」は、ぜひ利用したい機能だ。
「お知らせメール」には、受信したFAXデータを添付することも可能だ。添付ファイルはPDF、TIFF、JPEGのいずれかでできる。この機能を利用すれば、メールで受信FAXを確認でき、メーラーのフォルダで受信FAXを管理することも可能となる。また、メールアドレスは3件まで設定可能だが、ここにメーリングリストのアドレスを登録することもできるので、部門単位といった多人数にも対応できる。
送信時はPC内のファイルを直接送れて簡単、受信時は紙のムダもなし
初期設定が終わると、FAXの送受信が可能になる。FAXの送付は、PC内にあるデータを直接指定可能で、Word、Excel、PowerPointのOfficeドキュメント(拡張子「docx」などの2007形式にも対応)やTIFF/JPEG画像、テキスト、PDFが指定できる。受信済みのFAXも転送可能だ。
送信する場合、ファイルをアップロードし、送信先の電話番号を入力する。相手の番号は過去の履歴から指定でき、電話帳を利用することもできる。電話帳にはCSVファイルを取り込むことができるので、すでに住所録データなどがあれば簡単に追加できる。電話帳には最大500件の番号が登録可能だ。
テストとして、PCから今まで利用していた複合機、つまり通常のFAXに送ってみたところ、通常のFAXから送られた原稿を受信するよりも、綺麗に受信できた。通常のFAXから送るときは、印刷した紙原稿を読み取る工程があるため、原稿が斜めになっていたり、品質が劣化したりする。しかし、インターネットFAXでパソコンに保存しているデータを送信する場合は、デジタルデータを画像化して送るので、一般のFAXで送信されたものより綺麗になるようだ。
なお、反対にBizFAXでFAXを受信した場合の話をすると、FAXをデータとして受信するため、本当に印刷が必要なものだけを紙で出力すればいいというメリットがある。通常のFAX機のように、受信したFAXが全て印刷されてしまい、回収されぬまま山積みになることもなく、整理してファイリングしたりする手間もかからず、PC上でスマートに管理することができるのだ。もちろん、用紙代の節約にもなる。
お知らせメールでスマートフォンやタブレットでもFAXチェック!
「お知らせメール」の通知先のメールアドレスには、携帯のメールアドレスも指定できるので、外出先でもリアルタイムにFAX内容を確認できる。今回はiPadを利用して、受信FAXを確認してみた。メール内のプレビューでも十分内容が確認できる状態だ。添付ファイルをiBooksで開いて拡大すると、細部までよく見えた。
クラウド連携などの工夫で使い方が広がる
こうしたインターネットFAXが活躍する業種はたくさんあると思われる。例えば不動産業だ。間取り図のやり取りに使えば、顧客や他の営業所に送信する際の紙の節約になるばかりか、営業担当が外回り中にスマートフォンや携帯電話で間取り図の確認をするのにも役立つだろう。
あるいは、数多くの支店から営業日報やチェックリストなどを大量にFAXで受信するような業態、例えばフランチャイズの飲食店にも向いている。受信する本部側などでインターネットFAXを使えば、送られてきた大量のFAXをPC上のデータとして管理できるので、受信する用紙の節約になるうえ、過去の記録のチェックも簡便になるに違いない。
また、受信FAXは「お知らせメール」を活用することで利便性は向上する。受信FAXを長く保存したいならば、「Send To Dropbox」のようなサービスを使ってDropboxへ送ったり、Evernoteのメールアドレスに送信して保存するなどができる。クラウドサービスと連携させて、キーワードをタグでつけておけば紙のFAXでは難しい過去の履歴検索も可能になる。
インターネットFAX導入のメリットが大きいケースとは
メール全盛の今でもFAXを使いたいというケースは多く、FAXの方が便利だという業務もある。例えば、高齢者などメールをあまり使わない顧客を多く抱える会社や、署名が必要な紙の注文書を使っている会社などではFAXは使われ続けるだろう。
このように普段からFAXを使ってきた会社では、「BizFAX ストレージ&リモート」を導入することで、FAXをデータ化することにより、従来のFAXを利用したい顧客や取引先ともメール感覚でやり取りできる点が非常に便利だ。
また、そのような事情がない場合でも、FAX機のリース代が要らない、通信費が安い、用紙代の節約になるなど、コスト削減に効く要素がいくつもある。したがって、普段FAXをあまり使わない、だが時に必要なので無くすわけにはいかない、という利用頻度が低い会社こそ、インターネットFAXの導入による維持費削減、というメリットは見逃せないといえる。 そう考えると、インターネットFAXの導入は、およそ業務にFAXを使う全ての会社に検討してもらいたい選択肢の一つとも言えるのではないだろうか。