東京大学生産技術研究所(東大生産研)と小津産業は11月27日、放射性セシウム吸着効果のある人工青色顔料「プルシアンブルー」(画像1)と馴染みやすい不織布を用いることで、「放射性セシウム除染布」(画像2)の量産工程を確立したと発表した。
成果は、東大生産技術研究所の化学系有志研究グループと小津産業の技術者らによる共同研究グループによるものだ。
福島第一原子力発電所の事故以降、放射性物質による環境汚染が深刻な問題となっている。中でも半減期が約30年と長いセシウム137イオンを水や土壌から除くことが重要課題となっている。
研究グループは、東日本大震災が発生した2011年3月から今回の研究を開始、環境省の支援(環境研究総合推進費)と福島県飯舘村の協力を受けて、2012年5月に放射性セシウム吸着効果のある人工青色顔料「プルシアンブルー」を繊維に固定化する新しい方法を開発していた。
同方法により作製した放射性セシウム除染布は、ほかの陽イオンが多量に共存していても、微量のセシウムイオンを選択的に回収できる点が特長の1つ。このことは、同グループが福島県での実験で明らかにしている。
しかし、量産工程が確立されていなかったため、実際の除染作業における活用には至っていなかった。
そこで今回、東大生産研は小津産業の協力を得て、放射性セシウム除染布の量産工程を確立。プルシアンブルーとなじみやすい不織布を用いることで、生産ライン上でも、プルシアンブルーが不織布へ固定化された。
今回量産化が可能となった放射性セシウム除染布の特徴は、以下の通りだ。
- 手作業で丁寧に試作した除染布と同程度のセシウムイオン回収能力を有する
- 2種類の原料溶液へ不織布を順次浸すだけの簡便な生産方法である
- 得られた吸着材は軽くて丈夫であり、プルシアンブルーが脱落しにくい
- 切断も容易で、さまざまな大きさ・形にしやすい
- 従来品に比べ低コスト化が見込まれる
小津産業は、放射性セシウム除染布の大量生産ならびに供給を開始する予定だ。除染布はシート状、ロール状など多様な形態に加工でき、水、土壌、下水汚泥、焼却灰などの除染への活用が期待されるという。今後、自治体、除染業者、除染装置メーカーなどへ供給していく予定だ。なお製品の特性上、使用後の処理も考慮しなければならないため、基本的に個人への販売は行わないとしている。