日本デザイン振興会主催による2012年度グッドデザイン賞の受賞発表展「グッドデザインエキシビション 2012」が、東京ビックサイトにて11月23日~25日の日程で開催されている。今回からは、夏に開催されていた従来の「グッドデザインエキスポ」から名称と開催時期が改められたほか、新たな試みも行われている。ここでは、23日に行われた記者会見とプレス向け会場特別公開の様子をレポートする。
今回の受賞デザインを決めた5つの傾向
記者会見では、審査委員長の深澤直人氏によって審査の経緯が語られた。深澤氏は、今回の審査対象に見られた5つの傾向や見るべき焦点を各審査員に伝えてから審査に臨んだのだという。
ひとつ目は、コミュニティとして発達していく要素がある、今までとは違うタイプの新しい活動やソフト(ハードウェアに対しての)を含んでいること。ふたつ目は、ハードウェアにおいて非常に細かく単純な発明だが、今後大きな核となって普遍的に広がっていくであろうと思われるもの。3つ目は、過去にデザインの定義を牽引し続けて来た、形や美しさの極まったものや卓越したもの。4つ目は、現在の社会や人達が抱えている、あるいは意識している問題を、洗練した方向に引き上げたり解決させたもの。そして5つ目は、経験した人でなければ出せないアイデアが含まれているもの。たとえば、震災経験者にしか出せないアイデアなどが相当する。
最後に深澤氏は、「完成された製品よりも、それをなしている一部の重要な部品や生産技術などもデザインに包括されていくだろうという予測を立てて審査しました」と語っている。その言葉通り、今回の展示物には、完成品ではない物にも焦点が当たっている。これは、完成品ではない品にもデザインやものづくりを論じる基点があるのではないか、という意味合いが込め込められているという。
新たな試みを会場の様子を交えて紹介
今回のグッドデザインエキシビションは、名称や開催時期の変更だけではなく、1,108点の受賞デザインをすべて展示したり、「グッドデザイン大賞」を選ぶ来場者投票を行ったりするなど、新たな試みも行われている。ここでは、その新たな試みを会場の様子を交えながら紹介する。
受賞した1,108件すべてを会場に展示
昨年との大きな違いとして、グッドデザイン賞を受賞した1,108件すべてを会場に展示している。従来は受賞しなかったデザインの展示も併せて行っていたが、2012年からは受賞デザインのみの展示となっている。これにより、今まで以上に受賞デザインをしっかりと見ることができる。
「グッドデザイン・ベスト100」の選出と展示
審査会が、"明日を切り拓く力をもったデザイン、未来を示唆するデザイン"を選出した「グッドデザイン・ベスト100」という試みも今回が初となる。ベスト100に選ばれたデザインは、会場のセンターゾーンを貫く特別展示コーナーに展示され、展示コーナーの壁面にビジュアルを掲載するといった演出も行われている。なお、グッドデザイン金賞などの特別賞も、ベスト100に選ばれたデザインから選出される。
グッドデザイン大賞の来場者投票を実施
さらに、来場者も参加できる試みとして、「グッドデザイン大賞」を選ぶ投票所が会場内に設けられた。2012年のデザイン・オブ・ザ・イヤーとなるグッドデザイン大賞は、審査員と2012年の受賞者、そして来場者の投票によって決定し、26日に発表される予定だ。
特別コーナーも新たに設置
長年にわたって人々に支持されてきた商品のデザインを展示する「ロングライフデザイン」、震災からの復興を志すデザインとした東北・茨城のデザインコーナー「Area Aid Design Project -JDP東北茨城デザインプロモーション-」、日本デザイン振興会が協力関係を続けているタイ王国の「Design Excellence Award 2012」で受賞した作品の展示コーナーが設けられた。
東北・茨城のデザインコーナー「Area Aid Design Project -JDP東北茨城デザインプロモーション-」防災手帳や工芸品などが展示されている |
「Design Excellence Award 2012」受賞作品の展示コーナー。タイの文化と風土に根ざしたデザインを紹介 |
企画展示ブース「デザインコミュニケーション」
企業やデザイン教育機関による企画展示ブース「デザインコミュニケーション」を新設。朝日ウッドテック、イトーキ、燕三条地場産業振興センター、トヨタ自動車、ニコン、パナソニック、本田技術研究所、大阪芸術大学、東北芸術工科大学、武蔵野美術大学が参加し、グッドデザインエキシビションならではの企画展示を実施している。
そのほかにも、従来から好評だった現在や過去の受賞作品が購入できる「All About スタイルストア」、ものづくり体験やワークショッププログラムを実施するコーナーなども用意されていた。
今年度からは開催時期含め多くの点が新しくなったが、投票という形で「グッドデザイン大賞」に対する一般の声を集めていたのが印象的だった。15点の大賞候補の中から、マイナビニュース読者が選んだ"グッドデザイン大賞"もすでに公開しているが、一般からの声が反映された「グッドデザイン大賞」の結果に期待したい。