日本最大級のオンラインゴルフ場総合情報サービスを提供するゴルフダイジェスト・オンラインは、2011年7月に創業以来初となるサイトの全面リニューアルを敢行したものの、オープン当日に原因不明のトラブルに見舞われてしまった。オンラインサービスをビジネスの主軸に置く企業としては致命的な状況に陥った同社は、いかにピンチを切り抜けたのだろうか──。

11月8日(木)に開催された開催する事例紹介セミナー『大規模システムのService Assurance(サービス補償)とは?』では、ゴルフダイジェスト・オンライン システム革新本部 システム部 部長 羽石哲生氏が登壇。同氏は、『あれから1年。日本最大級オンラインゴルフ総合情報サイトはどう変ったか?』と題する講演の中で、システム障害からどうやって復旧を成し遂げたのかをはじめとして、サイトリニューアル後の日々の運用で果たした改善の内容などについて言及した。

10年後のビジョン実現を目指し、"継ぎ接ぎだらけ"のシステムを刷新

ゴルフダイジェスト・オンライン システム革新本部 システム部 部長 羽石哲生氏

ゴルフ用品のオンライン販売をはじめ、ゴルフ場のオンライン予約サービス、ゴルフ競技ニュースの提供など、ゴルフに関わるさまざまなビジネスを展開するゴルフダイジェスト・オンライン(以下、GDO)。同社の経営基盤そのものとも言えるポータルサイトの会員数は現在約200万人を超えている。

しかし、事業が拡大していくなかでさまざまなサブシステムが乱立するようになり、今何が起きているのかを把握するのが難しい状態に。ユーザーがゴルフ場を予約しようとしても、お昼の時間帯はアクセスが集中してほとんど予約ができなかったり、販売サイトではピークとなる夜間にエラーが表示されたりと、「オンラインサービスを提供するには恥ずかしい状況」(羽石氏)となっていたのだ。

こうした状況を踏まえてGDOでは、10年後のビジネスのあるべき姿を見据えた中長期計画を2010年に策定、その中でIT基盤を抜本的に改善することが掲げられた。そしてGDO10年ビジョンの実現を可能とする全社IT基盤構築のビッグバンプロジェクトがスタートしたのだった。

新しい「GDOシステム」の大きな特徴の1つに、会員基盤システム群を独立させて、予約システムなど各種システムとの連携を図ることがある。以前は、ゴルフ場予約システムが会員情報を保持しており、他のシステムはゴルフ場予約システムに会員情報を取りに行くか、独自に情報を持つかに分かれていているなど、会員情報の扱いが統一されていなかったのだ。

「すべてのデータの受け渡しトランザクションをEAIツールでコントロールするようにし、勝手にサブシステム間での会員情報のやり取りはさせないようにした。またEAIツールを入れることで、他社システムとの連携も容易に行えるようになったため、今後のシステム拡張時にも迅速かつ低コストで対応できると期待している」(羽石氏)

絶体絶命のピンチを救った「CA APM」

そして2011年7月1日、ついにGDOシステムはカットオーバーするが、その直後にシステムに異変が生じる。ECシステムの動作が重くなり、会員システムへのログインができなくなるなど、次々とトラブルの報告が寄せられたのである。

即座にWebサイト構築を手がけたベンダーに対応を求め、解析を開始したところ、障害の原因らしきシステムの不具合が多数見つかった。

「ベンダーと知恵を絞っても解決方法が見つからず、そのまま40時間も経過してしまった」と羽石氏は、当時の緊迫した状況を振り返った。

そこで羽石氏らは以前よりWebアプリケーション性能監視ソフトウェア「CA APM」の提案を受けていたサムライズに相談。障害発生から2日後となる7月3日午前にCA APMをセットアップし、午後から原因究明を開始する。するとなんと17:00には稼働可能な状態にまで復旧したのである。

「絶望的な状況だったので、大げさではなく本当に"救世主"が現れたという心境だった」(羽石氏)

CA APMを導入することで判明したシステム障害の原因は、特定のJSPでストールが発生したためにメモリーリークが生じていたことにあった。

「もし原因がわからなければ、ずっと再稼働することは叶わなかっただろう。リリース前に何回もテストを重ねていたので大丈夫だろうと安心してしまっていたが、実際に稼働してみると想定外の状況が起きた」と羽石氏。

このトラブルから得た教訓を踏まえ、GDOでは現在「CA CEM」と「CA Intoroscope」といったシステム可視化ソリューションを導入し、万全のモニタリング環境を整えている。

「運営の中での予防的な監視を積み重ねることで、今はサイト改善のPDCAサイクルを着実に進めることができている。これまで決して順風満帆にシステム構築・運用を行ってきたわけではないし、今も課題はたくさんあるが、少ない人数で安定稼働を維持すべく努力していきたい」と羽石氏は宣言し、講演を締めくくった。