日本スポーツ振興センターは15日、世界中のクリエイターから募集した国立競技場のデザイン案のなかから採用デザインを発表した。
新国立競技場は、その立地条件や収容人数、スポーツからコンサートまで行う多様性などの条件面もさることながら、「新しい時代のシンボルとなるべき創造力」が求められ、デザイン案を世界中のクリエイターから募集していた。最終審査に残った作品の中から、採用作に贈られる「最優秀賞」(賞金2,000万円)のほか、「優秀賞」(賞金700万円)と「入選」(賞金300万円)が発表されているので順に紹介しよう。
日本の技術を尽くして斬新なデザインを実現
最優秀賞に選ばれたのは、ザハ・ハディド・アーキテクツのデザイン。改築案の中でも特に話題を集めていた、近未来的なデザインだ。
審査委員会は、このデザインについて「極めてシンボリックな形態だが、背後には構造と内部の空間表現の見事な一致があり、都市空間とのつながりにおいてもシンプルで力強いアイデアが示されている。可動屋根も実現可能なアイデアで、文化利用時には祝祭性に富んだ空間演出が可能」と評価。中でも、最も高く評価されたのは「大胆な建築構造がそのまま表れたダイナミックなアリーナ空間の高揚感、臨場感、一体感」、そして「強靱(きょうじん)な論理に裏付けられた圧倒的な造形性」だったという。
このデザインについて、一見して分かる通り実現は容易なことではない。中でも、「象徴的なアーチ状主架構」は「現代日本の建設技術の粋を尽くすべき挑戦になる」と講評でも触れられている。また、講評でも触れられているとおり「強いインパクトをもって世界に日本の先進性を発信し、優れた建築・環境技術をアピールできるデザイン」であることが評価されたといえる。
実現性の「優秀賞」と美しさの「入選」デザイン
「最優秀賞」の次点にあたる「優秀賞」には、コックス・アーキテクチャーの作品が選ばれた。この作品は「品格を備えた静謐(せいひつ)なデザイン」と、「実現性の高いセクター計画されたスタンド」、「屋上庭園を含めた魅力的なホスピタリティ」などが高く評価された。その一方で、「スポーツの聖地である国立競技場としての祝祭的な高揚感、強いメッセージ性に欠けるのではないか」という印象が挙げられていた。
また、「入選」には、SANAA+日建設計の作品が選ばれた。「環境に呼応したなだらかな起伏のある屋根と観客席」や「周辺環境や自然との親和性」、など、「開かれた競技場のイメージ」が高く評価された。しかしながら、「曲面をなす屋根のメンテナンス」や「起伏ある屋根とスタンドの隙間が観客の集中力を妨げる」などといった懸念も示された。
最終審査に残った作品
なお、最終審査に残ったそのほかの作品は下記のものとなる。