メルシャンは11月14日、ブドウを収穫する時間帯の違いによりブドウ中の香り成分の前駆体の濃度が変動することを解明したと発表した。同成果は、同社と山梨大学 ワイン科学センターの鈴木俊二氏らによるもので、詳細は11月17日に開催される「ASEV 日本ブドウ・ワイン学会 2012年大会」にて発表される予定。
ワインの品質は、原料となるブドウの品質の影響が大きいと言われている。そうしたブドウが含むいくつかの成分では、栽培環境や生育過程でその含有量に違いがあることが知られており、多くのワイナリーではタイミングを見極めながらの収穫を行っている。
近年、ブドウ栽培にとって比較的温暖な地域では、収穫したブドウが熱くなり品質が低下することを防ぐため、ブドウを冷たい状態で収穫する「夜収穫(ナイトハーベスト)」を行うワイナリーが増加しており、今回の研究は、こうした環境の違いを科学的に解明するために行われたという。
具体的には、山梨県甲州市勝沼町のブドウ畑にて、「シャルドネ」、「ソーヴィニヨン・ブラン」、「リースリング」の果粒を1日の中で数時間おきにサンプリングし、ワインの香りの中でも柑橘系アロマとして知られている3MH(3メルカプトヘキサノール)の前駆体の含有量を比較した。また、早朝収穫と日中収穫のブドウを用いて実際に醸造試験を行った。
結果として、ブドウ中の前駆体3MHの含有量は、深夜から早朝にかけて増加し、日中減少する傾向が認められたという。また、前駆体3MHの構成成分であるグルタチオンの量は、前駆体3MHの生成量に対応して増減していることも確認。実際に、これらのブドウを使ってワインを醸造した場合でも、早朝に収穫したブドウから造ったワインの方が、日中に収穫したブドウから造ったワインと比較してより多くの3MHを含んでいることが確認されたという。
今回の研究の結果は、前駆体3MHを一例として「夜収穫(ナイトハーベスト)」が科学的に有意性があることを示すものであるほか、研究グループではこれまでの研究から、ブドウ中の前駆体3MHの含有量は環境ストレスモデルにより変動することも分かってきており、これらの知見を併せることで、産地ごとの特徴(テロワール)の存在理由に科学的な根拠を持たせる形で解明できる可能性が出てきたと説明ている。
なお、メルシャンでは今後もブドウの持つポテンシャルを最大限に引き出したブドウ栽培およびワイン醸造のためのさまざまな研究を続けていく方針としている。