Texas Instruments(TI)は、産業用DSP「KeyStone」の第2世代製品として、ARM Cortex-A15 MPCoreプロセッサを採用したマルチコアSoC 6製品を発表した。
TIのDirector of Worldwide Marketing,Multicore Growth Markets(MGM),Multicore Processors Business Unit(MPBU)を務めるMukesh Kumar氏 |
「クラウドベースのアプリケーションが当たり前になってきたが、それに伴い、機器の性能要件が高まってきた。TIは常により良いクラウドを実現することを目指し、具体的なアプリケーションを想定して開発を進めてきており、第2世代KeyStoneでは3つのアプリケーションの方向性を示して、それに対応する性能の実現を目指した」とTIのDirector of Worldwide Marketing,Multicore Growth Markets(MGM),Multicore Processors Business Unit(MPBU)を務めるMukesh Kumar氏は語る。
その3つというのが、1つ目が汎用的なサーバの補完。2つ目が企業および産業向けアプリケーションの強化。そして3つ目が高性能ネットワークへの更新である。
今回発表された6製品はCortex-A15 MPcoreプロセッサのほか、TMS320C66x DSPコアも搭載。また、ハードウェアアクセラレータとして、セキュリティプロセッシング、パケットプロセッシング、イーサネットスイッチなども搭載している。製品としては、Cortex-A15 4コア品「AM5K2E04」、同2コア品「AM5K2E02」、Cortex-A15 1コア+1DSP品「66AK2E02」、Cortex-A15 4コア+1DSP品「66AK2E5」の4製品が「K2Eシリーズ」としてピンコンパチプル。Cortex-A15 4コア+8DSP品「66AK2H12」ならびにCortex-A15 2コア+4DSP品「66AK2H06」の2製品が「K2Hシリーズ」としてピンコンパチで提供される。
いずれも28nmプロセスを採用しており、各コアの周波数を合計すると最大15GHz(1プロセッサあたりの動作周波数は800MHz~1.4GHz)、消費電力のレンジは6~13Wだという。また、アーキテクチャも従来のDSP単体から改良され、Cortex-A15コア向けシェアードキャッシュメモリが4MB(ARMクラスタ)、DSP側は各コアごとに1MBのL2キャッシュが割り当てられ、その下に最大6MBのARMコアとDSPコアが共有するメモリ領域を設置。その共有メモリ領域をメモリコントローラならびにDSP-DSPやDSP-ARMなどの各コア間でデータのやり取りを円滑に行うためのマルチコアナビゲータで管理することで、円滑なデータ処理を実現したという。
また、インタコネクト部も改良されており、内部バスの帯域幅を通常の128ビットから倍増の256ビットに拡張しており、「これによりマルチコアのARMコアの性能をフルに発揮できるようになった」とするほか、システム全体のパフォーマンス向上のために、高速・低遅延の外部メモリアクセスの実現や、1G/10G Ethernetスイッチの統合などが図られているという。
これら製品で同社が想定しているアプリケーションとしては、「専用サーバ分野」ではHPCやメディアプロセッシング、ビデオアナリティクス、アドバンスド・ビデオ(H.265)、ゲーミング、仮想デスクトップインフラストラクチャ、レーダーなどで、「66AK2H12」ならびに「66AK2H06」の適用を見込む。「企業/産業分野」では、SMB向けのビデオサーバ、デジタルビデオレコーダー、ビデオアナリティクス、産業用イメージング、産業機器コントローラ、VoIPゲートウェイ、航空システムなどで、66AK2E05」ならびに「66AK2E02」の適用を見込む。そして「高性能ネットワーキング分野」としては、クラウド向け装置、ネットワーク制御機器、ルーター、スイッチ、無線中継器、携帯電話基地局におけるコアネットワーク、産業用センサネットワークなどで、「AM5K2E04」ならびに「AM5K2E02」の適用を見込んでいる。
すでにK2Hシリーズのサンプルが開始されており、2013年1月にはさらに多くの種類のサンプル提供を開始するほか、同3月には評価モジュールの提供を計画。また、K2Eシリーズのサンプルおよび評価モジュールは同後半から開始される予定だという。価格は参考価格だが、1000個受注時でK2E02が49ドル、K2H12が144ドルとのこと。
なお、ARMは最近、64ビットコアやbig.LITTLEといった取り組みを進めているが、KeyStoneの第3世代品にこうした技術が取り入れられる可能性があるのかどうかを確認したところ同氏は、「第3世代品の基本的な考え方はARMコアならびにDSPコアのパフォーマンス向上とコア数の追加。そしてその増加しただけのコア数に見合う周辺機能の改良。それを実現できるのであれば、なんでも取り入れていく。それこそ、異なるARMコアの搭載の可能性もある。最終的には、どうやったら性能を向上できるかが問題であり、そこの解決策になるのであれば、答えはイエスになるだろう」とコメントしてくれた。