東京大学(東大)および神戸製鋼所は、既存車両を置き換えることなく基本的にはすべての駅でホームドアなどの利用を可能とした乗降位置可変型ホーム柵「どこでも柵」を開発したことを発表した。
同成果は、東大生産技術研究所千葉実験所の須田義大 教授、同大大学院工学系研究科建築学専攻の古賀誉章 助教、ならびに神戸製鋼所らによるもの。
日本におけるホームドアや可動式ホーム柵などは、乗客の安全確保・バリアフリーの切り札として、特に乗降の多い駅を中心に設置が切望されているが、なかなかすべての駅に設置という状態にはなっていない。この最大の理由は、扉の数や位置などが異なる複数の車両が運行されていることにあり、さまざまなサービスに対応するためにさまざまなタイプの車両が用意されている現状では、車両側を統一するということは容易なことではない。
こうした課題に対して、研究チームでは、扉だけでなく戸袋も移動することであらゆる車両のドア位置に対応できる「どこでも柵」の開発を行ってきた。開発は2009年度から開始、3年目の2011年度には国土交通省鉄道局より鉄道技術開発費補助金の交付を受け、各要素技術の開発と、第一次試作機の製作・試験が行われてきた。
第一次試作機は2ユニット分が製作された。製作されたのは戸袋体の両側に扉体が出入りするタイプで、戸袋体の幅1,400mm、扉体の出幅は1,100mm、高さ1,300mmに設定されており、動作が見えるように外板は透過性が確保されている。
直線と曲線(160R)の走路を走行させた動作試験の結果、駆動系・センサ系など各種の動作について大きな問題がないことが確認されたほか、80万回の長期耐久試験を実施しても問題が確認されなかったという。
2012年度は、実際のホームに設置する第二次試作機の設計・製作・設置工事を目指しており、実際のホームへの設置工事の課題、運用での課題を洗い出し解決していくとともに、同時に全体の軽量化とコストスタディも進めていく方針。また、各種センサの開発、想定されるあらゆるドア配置に対応した構成手法と制御アルゴリズムの開発、安全性への評価なども行う予定とのことで、最終的には、2013年度の商品化を目指すとしている。
なお研究チームでは、同システムを用いることが、ホーム上で今まで以上の安全・安心を提供するのと同時に、現在当たり前に実現している多様な車両による目的に応じた運行形態を継続し、さらに将来の新しい車両・運行形態への自由度を確保しておくことのできるような、より利便性・快適性の高い鉄道システムの発展に寄与するものであると確信しているとコメントしている。