富士通セミコンダクター(FSL)は11月8日、シリコン基板を用いたGaNパワーデバイスを搭載したサーバ用電源で2.5kWの高出力動作を実証し、2013年後半からの量産化にめどをつけたと発表した。

TO247パッケージのGaNパワーデバイス試作品(左)と、GaNパワーデバイスを形成した6インチSiウェハ(右)

GaNパワーデバイスは、従来のシリコン系パワーデバイスに比べオン抵抗が小さく、高周波動作が可能などの特徴を持ち、電源の変換効率改善や小型化繋がると期待されている。FSLでは、大口径化による低コスト化が可能なシリコン基板を用いたGaNパワーデバイスの事業化を目指し、2009年より量産技術の開発を行ってきた。また、2011年からは、特定の電源関連パートナーにGaNパワーデバイスの試作品を提供し、電源装置へのアプリケーションに向けた最適化に取り組んできた。

技術的には、富士通研究所と共同で、シリコン基板上に良質なGaN結晶を成長するプロセス技術の開発や、スイッチング時のオン抵抗上昇を抑制するための電極設計最適化などのデバイス技術開発、およびGaNの高速なスイッチングに対応した電源装置の回路設計の工夫などを行ったという。これらの成果により、GaNパワーデバイスを採用した評価用電源回路において、従来のシリコンデバイスを上回る変換効率を得ることに成功した。また、力率改善回路部にGaNパワーデバイスを搭載したサーバ用電源を試作し、2.5kWの高出力動作を実証した。今回の結果は、GaNパワーデバイスの高電圧、大電流用途への道を開くものとコメントしている。

同社ではすでに、会津若松工場に6インチウェハ量産ラインの立ち上げを完了しており、2013年後半より本格的にGaNパワーデバイスの量産を開始する予定。今後は、アプリケーションに最適化されたGaNパワーデバイスの提供と回路設計技術サポートを行うことで、さまざまな用途に向けた低損失で小型な電源装置の開発を支援していく方針で、2015年度にはGaNパワーデバイスで約100億円の売り上げを目指すとしている。

評価用電源回路における今回のGaNパワーデバイスを搭載した場合のシリコンMOSとの電源効率差(左)と、今回のGaNパワーデバイスを搭載したサーバ用電源装置の出力実証結果(右)