統合脅威管理(UTM)市場で堅調なビジネスの成長を示すウォッチガード・テクノロジー・ジャパンが新たなセキュリティソリューションを発表した。企業間で高まる事業継続対策ニーズへの一つの解として、クラウドを活用したUTMの自動設定機能「RapidDeploy」を「XTM OS」の標準機能としてリリースする。「複数拠点を構えるエンタープライズ企業、さらにマネージド・セキュリティ・サービス・プロバイダ(MSSP)にとって、コスト削減など最大限のメリットを享受できる」と語るアジア太平洋地域担当副社長のスコット・ロバートソン氏に、今後の戦略などについて話を聞いた。

複数拠点でのUTM設定がよりシンプルに

ウォッチガード・テクノロジー アジア太平洋地域担当副社長 スコット・ロバートソン氏

セキュリティ市場の現状について、ロバートソン氏は「"セキュリティへの投資コスト" "よりシンプルな操作性" "多様化する脅威への対応" という3つの要素に対する要求が高まっている」と分析する。そこで同社は、これらの市場ニーズに合致したラインアップを展開。

(1)低コストで導入できる価格帯

(2)インストールから管理・運用までシンプルに行える操作性

(3)UTMによる統合的なセキュリティ管理

これらの3点を訴求することで、「前年と比べて、順調に業績を伸ばすことができた」と同氏は自信を見せる。

とりわけ日本国内の中堅・中小企業向けUTM市場で確固たる地位を築く同社は今回、既存の戦略をさらに強化するため、クラウドを活用したUTMの自動設定機能であるRapidDeployを発表した。同社UTMの搭載OS「XTM OS」の最新バージョンであるXTM OS 11.6.3から標準機能としてリリースする。

RapidDeployは、クラウド上にある設定ファイルをUTMが自動ダウンロードして設定を行う機能。これまでUTMの設定作業は、IT管理者が1台ずつ行っていたが、「RapidDeploy」の登場によって、その作業コストが大幅に削減できる。クラウドは、同社のデータセンターを利用するパブリッククラウドと、企業内のプライベートクラウドが選択できるため、企業ごとのポリシーに沿った運用が可能だ。

特に、国内外に複数拠点を構える大企業や、複数拠点のセキュリティ管理サービスを行っているセキュリティサービス管理サービスプロバイダ(MSSP)に有用だ。

RapidDeployを活用すれば、UTM本体を各拠点に郵送した後、現地でネットワークに接続するだけで設定が完了する。これによって「IT管理者の出張コストや作業工数の削減、迅速な導入・設置といったメリットが得られる」と同氏。

エンタープライズ企業の事業継続対策にも有用

さらに同氏は、事業継続対策として活用できる点も強調している。例えば停電が発生した際、従来は電源が復旧した後に、IT管理者がUTMを再設定する必要があった。しかし、「RapidDeploy」を搭載したUTMは、電源の復旧と同時にネットワークに接続され、再設定が完了する。複数拠点に設置されたUTMが自動的に設定できるため、ディザスタリカバリとして非常に有効なソリューションとなっているのだ。

「事業継続対策は日本を含め、世界中で大きなトピックとなっている。そのような中で、電源復旧後に迅速にセキュアなネットワーク接続を再設定できるRapidDeployの果たす意義は大きい」(同氏)

今後の販売施策について同氏は、「RapidDeployの登場によって、当社のUTMはさらに"売りやすい"商材となった」とパートナー企業へメッセージを送る。パートナー企業は、設定の自動化に対応した点を訴求することで、顧客企業へ高い付加価値を提供できるようになるのだ。また、UTMの導入スピードも格段に向上する。複数拠点にUTMを導入する際は通常、数週間はかかる。しかし、UTMの自動設定機能が登場したことで、顧客企業への設定作業は「一日もあれば完了できる」という。

同氏は最後に、同社のビジネス戦略について以下のように説明した。

「セキュリティアプライアンス導入後に発生する情報漏えい事故の多くは"操作のミス"によって引き起こされている。いくら高性能なアプライアンスを導入しても、肝心の操作性が複雑では意味がない。当社は"よりシンプルに、よりセキュアに"というメッセージを掲げて、製品ラインアップを拡充している。RapidDeployはこの戦略を強化するうえで、非常に重要な意味合いを持つ。今後もこの点を追求して、多くの顧客ニーズに応えていきたい」

RapidDeployのようなソリューションを提供するセキュリティアプライアンスベンダーは、現時点では同社が唯一の存在となっている。このアドバンテージを生かし、さらなる高みを目指す構えだ。