大阪市立大学は11月1日、血液中の「マイクロRNA」を測定することで、慢性肝疾患の病因や病気の進み具合を診断する方法を開発したと発表した。
成果は、大阪市立大大学院 医学研究科 肝胆膵病態内科学の村上善基病院講師らの研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、10月31日付けで米オンライン科学誌「PLoS ONE」に掲載された。
ヒトにはマイクロRNAと呼ばれる小さなRNAが存在している。最近までその役割はよくわかっていなかったが、マイクロRNAの増減が病気と関わっていることが明らかになってきた。
このマイクロRNAは主に細胞の中に存在しているが、血液中では「エクソソーム」という直径100nm程度の小さな粒子の中に存在している。今回、慢性肝臓病の患者のエクソソームの中に含まれるマイクロRNAを測定し、病気の診断とその程度を評価する方法が開発された(画像1)。
慢性肝臓病の代表的な原因は肝炎ウイルスだ。日本でB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスに感染している人はそれぞれ約150万人、約300万人と推定されている。
慢性肝臓病は自覚症状が現れることが少ない。ただし、放置すると10-20年の経過で肝硬変になり、さらに肝がんが発生する。そのため、肝臓病の診断は重要だ。
現状の肝疾患の診断では、血液検査で肝臓が壊れていることがわかると、より精密な血液検査、腹部エコーなどでその原因を調べる。さらに肝生検を行い病理組織学的に病気の種類を診断し進行度を評価するので、手間がかかり、また、体を傷つけてしまうことが課題だ。
今回開発された方法では、エクソソームの中に含まれる数種類のマイクロRNAを測定するだけで、肝疾患のない人、B型慢性肝炎、C型慢性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を分類でき、さらに、病気の進み具合も評価できる。
しかも、この検査方法は簡便でたった1回の血液検査で診断することが可能だ。さらに繰り返し行うことができるため、病気の診断だけではなく、治療効果の判定などにも応用することができるのである。
画像2の表は、マイクロRNAを使った肝疾患診断法の実際をまとめたもの。マイクロRNAの発現結果に基づいて、「1つだけ別に取り出す交差確認(Leave-one-out Cross-Validation)」と呼ばれる統計的手法で診断を予測した結果を示したもの。この方法で行った診断の正確性(accuracy)は88.35%だ。
今後の予定は、平成25年度中に解析数を増やし、より少ないマイクロRNAの情報で診断の精度を高め、平成27年度に高度先進医療として認可されることを目指しているとしている。