10月31日、シュナイダーエレクトリックはBEMS(Building and Energy Management System)事業での日本市場参入を発表。あわせて統合ソリューション「SmartStruxure」の発表も行い、ビルにおけるエネルギー効率向上への取り組みを開始した。
発表会冒頭、シュナイダーエレクトリック 代表取締役であるセルジュ・ゴールデンベルグ氏は、「燃料を100ユニット入れても発電と送電時にロスが出るため、消費者の元に届く時には1/3になる。つまり、消費者レベルで1ユニット節約するということは燃料を3ユニット節約していることになる」と、消費者側での利用効率を向上させることが電力問題に大きく貢献することを強調した。
日本政府も省エネおよび節電を強化するエネルギー戦略を掲げているが、商業ビルの電力消費量は非常に多いにもかかわらず、省エネが進んでいないという実情があり、この分野での省エネ促進は大きな課題だ。シュナイダーエレクトリックはすでに世界ではBEMS分野で多くの実績を持っており、この技術をもって市場参入する。
すでに、日本国内でもトランクルームを運営するキュラーズに、全国の拠点をオンライン化して一元監視・管理するソリューションを提供し、管理負荷軽減と電力消費量削減を実現している。
「外資系だと景気が悪くなったらやめてしまうのではないかと不安に思う人もいるだろうが、シュナイダーエレクトリックが日本に事務所を開設してからすでに50年になる」と、ゴールデンベルグ氏はシュナイダーエレクトリックが日本に根付いた企業であることをアピールした。
続いて登壇したのは、シュナイダーエレクトリック ビルディング事業部 バイスプレジデントである指原洋一氏だ。同氏は日本での本格的な展開は今後となるが、すでに世界市場ではビルディング事業を大きく展開していることを紹介。数多くの実績があることをアピールした。
また、同氏は日本の政策として住宅省エネの義務化が行われる流れにあることを指摘。
「不動産業界からも、省エネ基準が建築基準に盛り込まれ、基準を満たしていないと建築できないという流れになるのではないかという話を聞いている。それが進めば、基準を満たさないビルの売買が出来なくなる可能性もある」と、業界内の談話を語った上で、「現状では国内では環境不動産(Green Building)の価値はあまり認識されていないが、エネルギー効率を高めるとともにその普及と建物資産価値の向上に貢献したい」と今後の目標を語った。
具体的な提案としてあげられたのは「オープンシステム採用による、ビル・エネルギー管理におけるトータル・ライフサイクルコストの最適化」、「IPネットワークとの融合による、ビル管理データの有効活用」、「ビル・エネルギーに関するトータルソリューションの提供」だ。
まず、現在はビル内に点在している空調や電力を管理するための装置をオープンシステムによって統合することで、既設の場合にはメンテナンスコスト等の低減をはかる。新築時に導入できれば、イニシャルコストの低減にもつながるというわけだ。
またIPネットワークと融合させることで、さまざまなデータを有効活用できるようになるという。 「たとえば天気予報のサイトから翌日や翌週の天気データを取得して、空調の利用計画に反映させるというようなこともできるだろう」と指原氏は活用例を語った。
ビル・エネルギーに関するトータルソリューションの提供という面では、今回発表となった「SmartStruxure」を活用したデマンド・コントロールおよびビル管理システムの構築に加えて、「Energy Operation」というエネルギーの見える化ツールの提供も行われる。さらに。ビル・エネルギー診断とコンサルティングを行う「Energy Management Service」も提供予定だ。
現在のビル内に管理対象が散在するサイロ型システムから、ビル全体を統合管理システムへの移行を行い、さらにスマート群管理システムへと発展させるのが、シュナイダーエレクトリックのビルディング事業の目指すものだという。
最後にこれらの技術を活用した実例として、シュナイダーエレクトリック自身のフランス本社およびR&Dセンターが紹介された。
フランスの本社オフィスは2009年に竣工されたビルで、設計段階から電力利用の効率化を強く意識。
「我々の事業とは全く関係のない建材等にもこだわり、このビル全体が北東に向いていることや傾いた建て方をしているのもポイントになっている」と指原氏。徹底的な取り組みの結果、総エネルギー消費量は同地区にあった以前のビルに比べて1/4に抑えられ、総エネルギー消費量は80kwh/平方メートル/年とかなり低くなっている。また、世界初のISO 50001認証ビルにもなった。
R&Dセンターに関しては従業員350名程度の比較的小規模な建物ではあるものの、総エネルギー消費量が40kwh/平方メートル/年に抑えられている。しかもこのほぼ全てを、自社で設置したソーラーパネルによる発電でまかなっている状態だ。空調設備には地下水を利用したチルドビーム方式を採用している。
同社では今後、既存の中規模ビルをターゲットに市場を拡大する方針だ。