日本ガイシは10月30日、独自に改良した結晶育成技術を用いて欠陥を低減し、緑色LEDの発光効率を従来比で約2倍に高めた高品質なGaNウェハを開発したと発表した。同成果は名古屋大学(名大)との共同研究によるもので10月14日から19日まで北海道札幌市で開催された「窒化物半導体国際会議(IWN2012)」にて発表された。
同ウェハは、単結晶育成技術である液相成長法を独自に改良することで、直径2インチのウェハ全面にわたる低欠陥密度と無色透明の両立を実現したもの。名大と同ウェハ上に発光部を形成した緑色LED素子を作製し発光試験を実施した結果、市販の緑色LED素子の約2倍にあたる60%の内部量子効率(注入電流密度1cm2あたり約200A時)を達成したという。
従来のサファイヤウェハを基板に用いたLED素子の場合、特に緑色では発光部の欠陥が多く、大電流を流すことができないため、十分な輝度を得ることができなかった。それに対し、欠陥を低減した同GaNウェハを基板に用いる場合、発光部の品質が向上し電流損失を減らせるため、大電流を流すことができ、高輝度の緑色LED素子を実現できることになる。そのため、同素子を用いて緑色LED光源を構成した場合、同じ素子数であれば従来に比べて20倍以上の明るさを得ることが可能となるほか、電流損失による発熱が少ないため、放熱機構の簡素化により光源を小型化できるという。また、発熱が抑えられることにより、熱による劣化が抑制されるため長寿命化も可能になるという。
同社ではすでに2012年4月に発光効率を従来比で2倍に向上させることが可能な青色LED向けGaNウェハ技術を確立しており、今後は、ハイブリッド自動車や電気自動車用のインバータ、無線通信基地局用パワーアンプなどのパワーデバイス用途も視野に入れ、GaNウェハのさらなる欠陥密度の低減と直径6インチ以上の大口径化を進めていく方針としている。
なお、すでに直径2インチのサンプルの出荷は開始されており、2012年中に4インチのサンプル出荷も開始する予定のほか、製造能力を現在の月産200枚(直径2インチ換算)から2012年度中に月産1000枚以上に引き上げる予定で、2014年までに、LED用途やパワーデバイス用途に向けて直径2インチから6インチまでラインアップをそろえる計画としている。