トヨタのスマホ向けアプリ「PLUG-IN Championship」をご存知だろうか。"充電"をコンセプトにしたアプリで、現在、全世界50カ国以上で利用されている注目のアプリだ。世界規模でユーザーが増え続けている同アプリはどのようにして生まれたのか、同アプリ制作に携わったPARTYのクリエイティブ・ディレクター 清水幹太氏に話を聞いた。
同アプリは、スマートフォンに充電器をプラグインするタイミングをスコア化し、他のユーザーとスコアを競い合うことで、充電という体験をエンターテインメント化したもの。アプリを起ち上げ、「START CHALLENGE」と表示されたボタンをタップすると、増減を続けるゲージが表示される。このゲージがMAXに貯まるタイミングを見計らって、充電器をプラグインするのだ。スコアが高ければ爽快感溢れる映像が流れる。映像のバリエーションは、全20種類。充電が満タンになるまでの残り時間も表示され、ユーティリティーアプリとしての利便性も高い。
スコアは、グローバルランキング、国ランキング、都道府県別ランキング、市区町村別ランキングがあり、各ランキングで3位以内に入るとメダルが授与される。このゲーム性もまた、ユーザーが繰り返し使う魅力のひとつとなっている。
PARTY流、企画コンセプトの生み出し方
今回の企画における、クライアントの要望は"プリウスPHVのグローバル規模での認知度を高めること"。特にスマートフォンアプリという縛りはなく、どのメディア・デバイスを使って生活者にアプローチするかもすべてPARTYに委ねられていた。
PARTYは面白いアイデアを売りにするクリエイティブラボだ。「ちょっと面白そう」な企画案を思いついたとしても全員が「これは面白い! 」と思えるコンテンツでないとクライアントに提案することはない。同企画に関しても、その点に関してブレはなかった。
商品の特性を抽出し、一般化する
様々な案は出るが、"これぞ! "と思うものは出ない。「人力でPHVを実現したらどうなるんだろう? 」、「PHVで動く掃除機を開発したらどうだろう? 」など、様々な珍案が飛び交う中、論点を「PHVにおけるプラグインって何だろう? 」ということに絞った。清水氏は案出しの際、"商品の特性を抽出して、それをもっと伝わりやすくするために一般化する"ということをよく考えるのだという。今回も、「プラグインってなんだろう? 」というところから、「現代における充電ってなんだろう? 」というところに論点を広げていった。
"充電"という行為は現代社会においてとても重要なトピックになりつつある。ひとたび街に出れば、どこに行っても、スマートフォンやパソコンの充電ができる場所を探している人や、電池が切れて困ってしまっている人が目につく。その光景を見た清水氏は、"充電"というものが、技術や社会の進歩との引換により生まれた「やらなければいけないこと」に思えたという。
"充電"を"Fun to charge"なものに変える
ところが、PHVにおいてユニークなのはその「やらなければいけないこと(充電)」を「別に充電しなくても走ることができる」ということ。これについてさらに突き詰めて考えていくと、「しなければいけない充電」から、「もっとよくするための充電」という新しい"充電"の提案をPHVが行っていることに気づいた。そこから同企画のコンセプト「Fun to charge」が生まれた。この企画の基板ともいえるコンセプトが生まれてからは良いアイデアが出始めた。そこからは、急ピッチで提案用のデザインと企画書をまとめていった。
グローバルで話題になる企画というものは、なにも新しい技術やユーモアのある表現に振り切ったものではなく、商品と生活者の感覚、世論と誠実に向き合って生まれた産物であり、"充電"をユーザーインタフェースに採用したのもプリウスPHVのエッセンスに裏打ちされたアイデアだったといえるだろう。「PLUG-IN Championship」で、PARTY流コンセプトワークの真骨頂を体感してみては?