気象庁は10月24日、米国航空宇宙局(NASA)の衛星観測データを基に解析した結果、南極上空のオゾンホールは、例年と同様に8月に現れた後に拡大し、9月22日に今年の最大面積である2080万km2(南極大陸の約1.5倍)まで広がったが、大規模なオゾンホールが継続して出現している1990年代以降で最も小さくなったことを発表した(画像1・2)。
これは、オゾン層破壊の促進に関係する南極上空(高度約20km)の低温域(-78℃以下)の面積が、7月中旬から8月にかけ例年に比べて小さかったことが主な原因と考えられるという。
ちなみにオゾン全量とは、地表から大気圏上端までの気柱に含まれる全てのオゾンを積算した量。仮に大気中のオゾンを全て1気圧、0℃として地表に集めたときに、オゾンだけからなる層の厚みをセンチメートル単位で測り、この数値を1000倍して表す。日本付近では通常、250~450m atm-cm程度の値となる。
なおオゾンホールの面積は、今年は1990年代以降で最小となったが、長期的に見ると1980年代前半と比較して依然として規模の大きい状態が継続している(画像3)。これは、南極上空のオゾン層破壊物質の濃度は緩やかに減少しているものの、依然として高い状態にあるためだ。
2012年は、オゾン層を破壊する物質の生産と消費の規制を定めたモントリオール議定書が採択されて25周年を迎えた。オゾン層破壊物質の減少がこのまま続けば(画像4)、南極のオゾンホールは徐々に縮小してゆくと見られるが、オゾンホールの形成・発達は南極上空の気温に大きく依存するため、気象条件の変動により、年によっては今年より規模の大きいオゾンホールが発生することも考えられるという。
世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)が取りまとめた「オゾン層破壊の科学アセスメント:2010」によると、南極上空のオゾン層が1980年以前の水準に戻るのは今世紀半ば以降になると予測されており、気象庁では引き続きオゾン層の状況を観測し、的確な情報提供に努めるとしている。