唐辛子を食べると体が熱くなり、汗が出るなどの身体反応が活発化するのは、大脳にある味覚を認知する領域と内臓などをコントロールする領域との神経ネットワークによって引き起こされる現象であることが、大阪大学大学院歯学研究科の姜英男教授らと森永製菓(本社、東京都港区)などの共同研究で分かった。“辛味”の情報が全身の健康状態に影響を与える可能性を初めて示したもので、「医食同源」の考え方を神経科学の分野から支持するものだという。
研究チームは、ラットの脳の「島皮質」と呼ばれる領域のスライス標本を作り、唐辛子の辛味成分であるカプサイシンの溶液に浸した。島皮質の前部にある「味覚野」にはカプサイシンの受容体が存在しており、カプサイシンによって刺激を受けた味覚野の様子を、特殊な「膜電位感受性色素」を用いる光学的測定法によって観察した。その結果、味覚野に生じた神経活動は、島皮質の後方に隣接する「自律機能関連領野」へと広がり、両領域間での周期的神経活動が周波数4-8ヘルツの範囲内で同期化することが分かった。
自律機能関連領野は、血液循環や呼吸、消化などの内臓機能をコントロールする領域であり、カプサイシンの刺激によって味覚野と間に神経ネットワークが築かれ、異なる神経細胞集団の機能連携が初めて視覚的にとらえられたことになる。この成果は、高次脳情報処理機構の理解に大きく貢献するものだという。
関連記事 |