ルネサス エレクトロニクスは10月23日、自社ハイエンドマイコンラインアップの拡充を目的に、32ビットフラッシュメモリ内蔵マイコン(フラッシュマイコン)「RXファミリ」に40nmプロセス採用製品を追加したこと、ならびにRXファミリの上位製品として組み込みプロセッサ(MPU)「RZファミリ」の開発を進めていることを明らかにした。

40nmプロセス採用RXファミリは、将来のスマート社会におけるエコロジー、安心・安全、便利・快適などへの要求に対応することを目指したマイコンで、従来のRX600シリーズでは、120MHz動作版を提供するほか、新たなシリーズとして最大240MHz駆動が可能な「RX700シリーズ」も追加される。いずれも最大8MBのフラッシュメモリ(ROM)を内蔵するほか、CPUコア自体の改良により、同一周波数時において、従来製品よりも高い性能を実現できるようになるという。

また、低消費電力化を進めた「RX100シリーズ」の展開も併せて開始する計画。同シリーズはローエンド低消費電力マイコンに適用してきた130nmフラッシュメモリ混載プロセスを適用したもので、32MHz動作時で50DMIPSの演算性能と155μA/DMIPSの電力効率(スタンバイ時で0.1μA)を実現したという。

社会のスマート化が進むことにより、ルネサスのマイコン製品などが適用でいる範囲が拡大するというのが同社が語る将来の社会像

RX700の概要。RXシリーズの中でもハイエンドに位置づけられる

RX100の概要。130μmプロセスを用いて、3mm×3mmのWLPクラスの小型化と低消費電力を実現する

一方のRZファミリは、今後需要の伸びが期待される300MHz以上が必要となる高性能処理やLinuxなどの汎用OSが使えるMPUラインナップへの要求に応えることを目的とした製品群。ARMコアに、自社で保有する独自の高性能・低消費電力技術を融合させたほか、マイコンビジネスで蓄積した豊富な周辺機能を利用した製品展開により、将来のスマート社会において求められる機器やシステムに最低なソリューションを実現することが可能になるとしている。

同ファミリとしては、コネクティビティにフォーカスした「RZ/Nシリーズ」およびグラフィック処理をはじめとするヒューマン・マシン・インタフェース(HMI)にフォーカスした「RZ/Aシリーズ」の2シリーズを用意。いずれも産業機器をメインターゲットとしてとらえており、従来、SoCとして提供していたARMコア製品向けIPを適用することが可能だという。

RZ/Nシリーズの第1弾製品はギガビットイーサ(GbE)やUSB3.0、PCI Express(PCIe)などインタフェース機能を搭載するほか、800MHz駆動のARM Cortex-A9コアによる2000DMIPSの演算性能を提供する。

また、RZ/Aシリーズの第1弾製品は1000DMIPSの演算性能を実現可能な400MHz動作のARM Cortex-A9コアと10MBのRAMを内蔵するほか、WVGA/XGAならびにOpenVG1.1対応のグラフィック機能を搭載することで、次世代の産業機器で求められるリッチなHMIを実現することが可能になるとしている。

これらの製品のサンプル出荷はRX100シリーズが2013年第1四半期、RX600シリーズが2013年第2四半期、RX700が2013年第3四半期、そしてRZファミリが2013年第2四半期をそれぞれ予定している。なお、生産は同社那珂工場を中心に、将来的にはTSMCへの委託も図っていく計画としている。

ARMコアのMPUを2つの用途に向けて提供することで、ARMのエコシステムを活用した機器開発が容易になるとしている

ルネサスのマイコン/MPUラインアップの変遷。2010年のルネサス エレクトロニクス発足時に比べるとプロセッサコアが大きく変わっていることが分かる