日産自動車は10月17日、回避支援を行う安全技術である「緊急操舵回避支援システム」ならびにタイヤの角度とステアリングの操舵力を独立に制御できるステアリング技術の実用化に成功したことを発表した。
緊急操舵回避支援システムは、ブレーキでは衝突を避けることが難しい状況において、障害物に衝突しそうになった際、自動ブレーキだけでなく自動操舵も行うことで、高度な回避の支援を行おうというもの。低速域での急な飛び出しのような予測できないリスクが発生した場合や、ドライバーの認知の遅れによる高速で渋滞末尾に追突しそうになった場合などでその効果が発揮されると同社では説明する。
こうした障害に対し、ステアリングで回避を行う場合、回避先のエリアに障害物がないことを検知する必要があり、常に周囲を検知し判断する必要がある。今回のシステムは、同社がこれまで培ってきたセンシング技術と、ECU(電子制御装置)による制御技術を組み合わせることで、ブレーキだけでは間に合わない場合、自動でステアリングを切り、側方への回避を支援する技術の確立を目指して開発されたもの。具体期には車両前方のレーダーとカメラ、車両左右後方の2個のレーダー、周囲にとりつけられた5個のレーザースキャナーからの情報をもとに、まず「ブレーキでは回避できない衝突リスク」を察知すると同時に前方に障害物の無い回避ゾーンがあること、後側方から接近する車両がないことを確認し、ドライバーにステアリングを切るべき方向を示し、ドライバーが直ちに操舵できない場合には、自動で操舵して衝突の回避を支援する。
一方の次世代ステアリングは、「意のままの走り」と「安心感のある走り」を実現した技術で、ハンドルの動きからドライバーの意図を読み取り、電気信号に置き換えてタイヤを操舵するため、機械的なシステムに比べて素早くドライバーの意図を車輪に伝えることが可能になるとともに、路面からの情報をより早く、分かり易くドライバーにフィードバックすることで、ダイレクト感の向上も実現したという。
また、道路上の不要な外乱要因を車両側で制御、遮断することで、必要な情報だけをドライバーに伝えることが可能となるという。これにより例えば、細かな凹凸のある路面上でも、ドライバーはハンドルを握り締めて細かな修正を加えることなく、意図したラインに沿って走行し易くなるという。
さらに、次世代ステアリング技術の機能の1つとして、少ない舵角修正で正確に車線をトレースして走り続けられるよう、車両の安定性を高めた直進安定性向上機能も併せて開発したという。同機能は、ルームミラー上部にある車載カメラにより、道路前方の車線の方向を認識し、自車の進行方向とのずれを認識した場合に、そのずれを低減するようにタイヤ角とハンドル反力を制御することで、路面のわだちや横風などにより車両の進行方向が変化した場合に、その変化を少なくするように作用し、長距離ドライブでの疲労へとつながる細かなステアリングによる修正操舵を減少させ、ドライバーの運転負荷の低減を図るとともに、安心感を持って走行することを可能にするもの。
複数のECUが相互監視することで、高い信頼性を備えることにも成功しており、もし故障や異常が発生した場合、他のECUが即座に制御を行うほか、電気が供給されなくなったような万一の時にはバックアップのためのクラッチが作動し、ハンドルとタイヤを「機械的」に結ぶことで、ステアリング操作を可能にしているという。
なお、同ステアリング技術は1年以内に販売されるInfinitiモデルに搭載される予定だという。