九州大学(以下、九大)は、学内の研究者・学生にネットワーク経由でITリソースを提供するための基盤「キャンパスクラウド」を構築し、研究者・学生向けのサービス提供を開始したと発表した。本基盤は、日立製作所(以下、日立)が構築を行った。
九大は、本基盤によりIaaSサービスと、学生向けに高性能なPC環境とアプリケーションソフトを提供する仮想デスクトップサービスの2種類のサービスを提供する。
研究者向けサービスでは、「Citrix CloudStack」をクラウド基盤ソフトウェアとして採用し、研究者の用途に合わせた仮想サーバを提供し、研究者は、複数のサーバをまとめたクラスタパッケージによるMPI(Message Passing Interfaceの略で、複数のCPU間のデータ通信により、複数の計算機による並列処理を可能とするもの)環境やWebサーバ、複数種類のクライアントOS環境が利用できるようになる。
また、Hadoopなど仮想サーバ上では本来の性能が発揮されづらい分散処理環境を利用する場合には、物理サーバを選択することもでき、さらに、あらかじめクラスタ化された状態のリソースを利用することで、ビッグデータの処理・解析などに使用するMongoDBなども短時間で準備することができるようになる。これらにより、研究者はインフラ準備の時間を短縮し、より多くの時間を研究のために利用可能となる。
学生向けサービスでは、授業や演習などで利用するデスクトップ環境とアプリケーションソフトウェアを、ネットワークを介して教室や研究室、自宅などから利用できる「クラウド型仮想デスクトップ環境」を提供する。これにより、学生は最適な学習環境で授業や演習に取り組むことが可能になる。
「キャンパスクラウド」は、オープンソースソフトウェア「Shibboleth(シボレス)」を利用して構築された九大の学内システム認証基盤と連携しており、学内のポータルページからシングルサインオンで容易にクラウド利用の手続きを行える。なお、認証技術には、日立のクラウドサービスプラットフォーム「Cosminexus」シリーズの1つで、サーバ側のシングルサインオンを実現する「uCosminexus Secure Unify - SSO」を適用している。
さらに、従来、個々に設置・管理していたサーバやストレージ、PCなどを「キャンパスクラウド」環境に移行することにより、ITリソースの一元管理が可能となり、省電力化への対応や、ITガバナンスの向上、セキュリティ環境の強化を行いながら管理・運用にかかる時間やコストを低減する効果が期待される。