ルネサス エレクトロニクスは10月11日、PCやサーバ、ストレージなどのCPU用電源(VR)としてマイコンベースのデジタルインタフェース搭載VRコントローラ「R2A30521NP」と電流検出回路を内蔵したインテリジェントDriver-MOSFET集積パワーデバイス「R2J20759NP」のチップセットを発表した。
最新のサーバやPCでは、稼働時の最高のパフォーマンスと、休止時の徹底した省エネ動作が要求され、従来システムよりもさらに高度なパワーマネージメントの実現に向けて、VRではCPUや上位システムとの綿密な情報交換が必要とされている。また、UltrabookなどのノートPCでも、電流検出回路における小型化や低消費電力化が要求されている。
同システムは、Intelの最新VR規格であるVR12/VR12.5/VR12.6に準拠した電源システムの小型化と低消費電力化、高精度化を実現するためのスケーラブル電源システムソリューション。マイコンが得意とするデジタルインタフェース機能やソフトウェアによるパラメータ設定などの柔軟性と、高精度&高速制御や低消費電流化に適したアナログ回路の安定性を兼ね備えた、ハイブリッドシステムとなっている。
今回、従来PWMコントローラと外付け回路で行っていた電流検出をDriver-MOSFET集積パワーデバイス側に電流検出回路を内蔵し、VRコントローラがその情報を読み取り制御する方式を開発。さらに、マイコンベースのデジタルインタフェースVRコントローラ「R2A30521NP」を製品化した。
「R2A30521NP」は、CPUや上位システムとはシリアルインタフェースによりパワー情報やシステムの状態を相互交換し合い、この情報を元に動作モードを切り替える専用クロックによって、パワーデバイスを逐一最適な動作モードに制御する。また、マイコンベースのVRコントローラの特長を活かし、動作周波数や保護機能の設定値などの各種パラメータをソフトウェアにより変更可能となっている。
「R2J20759NP」は、従来のDriver-MOSFET集積パワーデバイスに電流検出回路やPWM制御回路などの各種機能を搭載した。これにより、セットの基板上には外来ノイズに敏感な電流検出用配線とPWM制御信号配線が一切不要となり、VR電源の回路設計、および基板レイアウト設計が容易になる。
同システムの特徴は大きく3つ。1つ目は、約40%の実装面積削減により、システムを小型化したこと。従来技術ではインダクタンスの直列抵抗を使って出力電流を検出しているため、基板上には1相当たり2本ずつの電流検出用配線が必要だった。これに対し、同システムでは「R2J20759NP」自体が独自の電流検出回路を内蔵しており、基板上の電流検出用配線やノイズ除去用フィルタなどが不要となっている。また、「R2J20759NP」はQFN40パッケージで1相当たり最大40Aまで供給できる。さらに、PWM制御信号配線や電流検出用配線が必要な従来システムに比べ、当社比で約40%実装面積を削減できる。
2つ目は、低スタンバイ電流により、バッテリの長寿命化やスタンバイ時の情報更新取得機能に対応できること。次世代ノートPCでは、タブレットPCや携帯電話と同様にスタンバイ時の情報更新取得機能が要求され、これを実現するためには、スタンバイ時の消費電力を極限まで低減する必要がある。VRコントローラ「R2A30521NP」は、超低消費電流モードを搭載したマイコン「RL78」と同じアーキテクチャを採用しており、「R2J20759NP」との連携により、VR電源全体の消費電力はスタンバイモード時に約50mW、超スタンバイモード時には約0.8mWまで低減できる。
3つ目は様々な電源構成に対応可能なスケーラブル電源により、ユーザ機種のラインアップの容易化に寄与すること。電源ループ(パワーレール)は最大2ループ、相数は最大8相まで変更できる。これにより、ノートPCなどの10WクラスからサーバやハイエンドデスクトップPCなどの100Wクラスの電源まで幅広い用途に展開可能。今後、さらに使い勝手、性能を向上させるためにパッケージや機能・特性など、市場ニーズに対応した品揃えを図る方針という。
これらの特徴に加え、基板上の電流検出用配線は、一般的にパワーMOSFETのスイッチング時に発生するスイッチングノイズなどの外来ノイズの影響を受け易く、基板レイアウト設計時には注意が必要だが、電流検出用配線不要の同システムではノイズ耐量も大幅に向上している。また、インダクタンスの直列抵抗により電流検出する方式では、外付けの電流検出回路の設定値によっては、モード切替え時の誤動作や検出電流のアンバランスなどが懸念されるが、同システムでは内蔵パワーMOSFETのドレイン電流を直接検出可能なため、このような問題を回避できる。
また、電源システムに欠かせない過電流などの各種保護機能をハードウェアとソフトウェアで独立に2段階設定することができる。例えば、定常状態のリミット値と突発的かつ壊滅的な異常モードを想定したリミット値を独立に設定することにより、安全かつ実用的で使い勝手の良い電源設計が可能。ソフトウェアで設定する保護機能は、保護機能作動後の挙動をラッチ停止型、自己復帰型から選択できる。また、「R2A30521NP」はフラッシュメモリを内蔵しており、保護機能の作動を検出して自動的にイベント情報をFlashメモリに格納するイベントログ機能に対応している。このログデータは、I2Cなどのシリアルインタフェースを使って読み込むことが可能なので、セットのメンテナンスや保護回路の履歴チェックなどに幅広く活用できる。
なお、パッケージは「R2A30521NP」が8mm×8mm×0.95mmサイズ、0.5mmピッチの64ピンQFN、「R2J20759NP」が、6mm×6mm0.95mmサイズ、0.5mmピッチの40ピンQFN。サンプル価格は、「R2A30521NP」が290円、「R2J20759NP」が210円。10月よりサンプル出荷を開始する。量産は2013年1月から開始し、同年12月以降は月産50万セットを生産する計画。