スウェーデンのカロリンスカ研究所は2012年10月8日(現地時間)、2012年のノーベル医学・生理学賞の受賞者として、京都大学 iPS細胞研究所 所長/教授で、同大 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)の連携主任研究者の山中伸弥氏ならびに英ケンブリッジ大学のJohn B. Gurdon教授に授与すると発表した。

両氏の授賞理由を「for the discovery that mature cells can be reprogrammed to become pluripotent」と同研究所では説明しており、iPS細胞(人工多能性細胞)を開発したことが評価された形となった。

山中氏のiPS細胞に関する発表は2006年8月に、ノックインマウスの線維芽細胞を用いた多能性誘導アッセイ系により、候補因子の中から4つの遺伝子(Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc)の導入で、ES細胞と形態、機能が近似した人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell)が樹立できるということを米学術雑誌「Cell」に発表して以降、ほぼ毎年のようにiPS細胞に関する研究成果が発表を行ってきている。ノーベル医学・生理学賞では、広く実用化した段階で授与されるのが通例とされているが、今回の受賞は、そうした意味でも極めて早い段階での受賞となった。

同氏は1962年生まれの50歳。経歴などは、1987年3月に神戸大学の医学部を卒業。1993年3月にに大阪市立大学大学院医学研究科博士課程を修了後、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の博士研究員や日本学術振興会特別研究員、大阪市立大の医学部助手、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST) 遺伝子教育研究センター 助教授を経て、NAIST 遺伝子教育研究センター 教授。2004年10月、京大 再生医科学研究所 教授。2008年1月、iCeMS iPS細胞研究センター長、2010年4月、京大 iPS細胞研究所長となっている。

同氏の受賞者は日本人のノーベル賞受賞者は、米国籍を取得している南部陽一郎氏を含めて19名となり、医学・生理学賞の日本人受賞者は1987年の利根川進氏以来の2人目となる。

授賞式は2012年12月10日にスウェーデンのストックホルムで行われ、賞金として800万スウェーデンクローナ(日本円にして約9400万円:2012年10月8日時点)が贈られる。

京都大学 iPS細胞研究所 所長/教授で、同大 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)の連携主任研究者の山中伸弥氏 (出所:nobelprize.org)

英ケンブリッジ大学のJohn B. Gurdon教授 (出所:nobelprize.org)

ノーベル医学・生理学賞の授与に関する会見。左から中村道治 科学技術振興機構 理事長、山中所長、松本紘 京都大学 総長 (出所:京都大学)

■iPS細胞に関連する記事
京大、マウスの雌由来のES/iPS細胞から卵子を作り子供を産み出すことに成功 (2012年10月5日)
タカラバイオ、ES/iPS細胞の未分化維持状況を簡便に確認できる試薬を発売 (2012年9月28日)
慶応大など、繊維芽細胞から血小板を直接作成する技術を開発 - ヒトでも実証 (2012年8月10日)
NIMS、動物細胞に遺伝子を従来よりも高効率かつ安全に導入できる技術を開発 (2012年8月3日)
京大とJST、ALS患者からのiPS細胞を用いてALS用新規治療薬のシーズを発見 (2012年8月2日)
慶応大、105歳超の「百寿者iPS細胞」を作製して神経難病との比較が可能に (2012年7月27日)
iPS細胞から肝細胞への分化特性の差はドナーの違いが大きな要因 - 京大 (2012年7月19日)
名大、老化マウスのiPS細胞が若年マウスと同等の能力を持つことを実証 (2012年6月28日)