国立遺伝学研究所(遺伝研)は、長年にわたって論争が繰り広げられてきたイネ栽培化の起源地および起源の系統について、イネのゲノム解析を行い、その初発の起源地と栽培化のプロセスを明らかにしたと発表した。
具体的には、アジア各地から収集した野生イネ「O.rufipogon」446系統と栽培イネ「O.sativa」1083系統(japonica、indicaを含む)をゲノム解析し、ゲノム全長の構造変異のパターンを用いて、1529系統間の相互関係を明らかにしたというもの。また、遺伝的変異のパターン解析から、ジャポニカイネとインディカイネでは55のゲノム領域で、栽培化による選択圧がかかっている事も確認し、これらの領域には、脱粒性、芒の有無、粒幅など栽培化にとって重要な形質を支配している遺伝子が存在していることが確認された。
これらの遺伝的指標を用いた系統進化の解析と、各系統の生育地の情報を比較した結果、栽培化は、はじめに中国の珠江中流領域で起こり、1つの野生イネ集団からジャポニカイネが生まれたことが判明。その後、その集団に異なる野生系統が複数回交配し、インディカイネの系統が作り出されたと考えられるという。
研究チームでは、この結論と多くの系統の遺伝的多様性の情報は、今後の研究発展に重要な成果となるという。
なお、今回の研究で使われた野生イネの約350系統は、遺伝研が世界中から収集を進めてきた系統で、ナショナルバイオリソースプロジェクトで保存、公開している遺伝資源だという。