クリエイターがライブペインティングによって腕を競う国際的イベント「Cut&Paste」の東京大会が、ラフォーレミュージアム原宿にて行われた。
同イベントは2005年、ニューヨークを起点に発足されたもので、アジア地区、南米地区、北米地区、ヨーロッパ地区、中東地区といった5つの地域の主要都市で予選が行われる。今回行われた東京大会の勝者は、各地の優勝者が集うニューヨークでの世界大会への切符を手にすることになる。
このイベントの特徴は、参加者たちがひとつのテーマに沿ってリアルタイムで作品を仕上げていくところ。制作の一部始終を審査員と観客に見守られながら作業するのが、他のコンペティションとは大きく違うところだろう。部門は2D/3Dとモーション/アニメーションの2部門。
2D/3D部門のテーマは「実在する映画のオープニング・タイトルシーケンスの再解釈」。参加者は2人1組のチームを組み、第1ラウンド「コンセプトスケッチ」(15分)、第2ラウンド「3Dモデリング」(20分)、第3ラウンド「最終仕上げ」(20分)と全3回の工程ごとに時間を区切り、しかもラウンド毎に交代して作業する。個人の技術力だけでなく、チームプレイも試される内容だ。
本レポートでは、2D/3D部門に参加した3組の工程ダイジェストを追いかけていきたい。下書きレベルから最終段階を見比べると、数時間で、しかもバトンタッチしながら描いたものとは思えない出来栄えのものとなった。
桟敷大祐 & 水野貴信
桟敷大祐 & 水野貴信チームは、スティーヴン・スピルバーグ監督作品の『E.T.』をテーマに作品を制作した。
原作の雰囲気とはがらりと趣向を変え、E.T.が地球を侵略しにきたイメージで仕上げた。宇宙船やE.T.などを見ると、その描写力の高さがうかがえる。
JESSE FRANKLIN & 福田完治
JESSE FRANKLIN & 福田完治チームがテーマに選んだのは、ジェームズ・キャメロン監督作品の『アバター』。
原作に忠実な画風とレイアウトを実現したのは、第2ラウンドの3Dモデリング。その手さばきは圧巻で、会場の注目を集めていた。
與座巧 & 山本太陽
與座巧 & 山本太陽がテーマとしたのは、クリストファー・ノーラン監督作品の『メメント』。物語中における主人公の記憶を表現するために繊細な描写を用いている。
筆で描いた花の絵をその場でスキャンし、それまで作成していた画像に配置するという手法で、東北新社の中島信也氏やデジタルハリウッド大学の杉山知之学長をはじめとした審査員や観客を驚かせていた。
各チームとも、リアルタイムでの描画という緊迫した状況の中、三者三様の実力を見せつけた。審査の結果、『メメント』の與座巧 & 山本太陽チームが優勝となり、世界大会への切符を手に入れた。
観客参加型ブースも盛況
ライブトーナメントの傍ら、今大会にワークステーション「HP Z1 Workstation」を提供した日本HPが自社ブースを展開し、一般参加者が取り組めるコンペティション「"Mess with Jess"フォトデザインチャレンジ」を同時開催。参加者が友人・知人と撮った写真を取り込んで「HP Z1 Workstation」上で加工し、「いたずらやジョーク」を思わせるユニークな表現を競っていた。
世界大会は11月にNYで開催
優勝した2D/3D部門の與座巧 & 山本太陽チームは、11月にニューヨークで開催される世界大会に出場する権利が与えられた。世界中から新進気鋭のクリエイターが集う大会の様子は、同イベントのFacebookページにて随時更新されるとのことなので、彼らの奮闘ぶりはこちらでチェックしてみてほしい。