Silicon Laboratories(Silicon Labs)は、ARM Cortex-M3ベースのマイコン「Precision32 SiM3L1xx」ファミリと、開発ツール「Power-Aware Precision32」を発表した。
同ファミリおよびその開発ツールは、ミクスドシグナル技術により、3.6V電源でリアルタイムクロック(RTC)がイネーブル時の電力消費を、アクティブ・モードで175μA/MHz、スリープ・モードでは250nA以下に低減。そのため同社ではInternet of Things(IoT)を可能とするスマートメータ、電気/ガス/水道モニタ、ホームオートメーション、ワイヤレスセキュリティシステム、資産追跡システム、個人用医療機器といったアプリケーションに最適だと説明している。
最大50MHz動作のARM Cortex-M3コアと32~256KBのフラッシュメモリ容量をベースに、多くの8ビットマイコンを下回る消費電流による周辺機能と複数のアーキテクチャを搭載することで、バッテリでの稼働時間を犠牲にせず低電力組み込み設計を実現している。アクティブモードでの電力消費削減では、ダイナミック電圧スケーリングにより、変化する条件に応じて内部デバイス電圧を調整。例えば内蔵のDC/DC降圧コンバータは、他の32ビットマイコンに比べてアクティブモード時の電力の40%削減を実現している。
またデータ転送マネージャ、AES暗号化ブロック、ランタイムエンコーダといった専用周辺機能により、CPUの介在なしでワイヤレスアプリケーションのRFプロトコル処理を加速し、システムの電力消費の低減を可能としている。さらに拡張ダイレクトメモリアクセス(DMA)により、プロトコル関連の電力を90%削減したほか、RAMおよびレジスタ状態保持機能により起動時間4μsを実現している。この他、特許取得の電荷再分配型アーキテクチャのLCDコントローラを搭載しており、性能の低下なしにディスプレイの電力消費を40%近く低減することが可能だという。
一方のスリープモード時の電力消費削減では、チャージポンプ、RTC、センサインタフェース、スリープモードUART、コンパレータ、LCDコントローラといった内蔵周辺機能の最適化が図られている。チャージポンプはスリープモード時にデバイス回路に電力効率の高い入力電圧を発生し、スリープ電流をアナログ回路では35%、デジタル回路では50%削減することに成功。また、マイコンがスリープモードの間のセンサ計測のために、クロックおよびインタラプト用のマルチアラームRTC、低消費デバイス通信用のスリープモードUART、内部センサインタフェースを備えている。自律型センサインタフェースはスリープモード時にもカウントを継続し、カウントがオーバフローするか、設定されたしきい値に達した場合にマイコンを起動する仕組みとなっている。
加えて同ファミリおよび開発サポートツールは、全システム電力収支を念頭に設計されている。システムレベルの電力を最小化するために、電圧変換テクノロジーだけではなく、システム内の他のICが消費する電力を削減可能な周辺機能も搭載する。全体の消費電力を最小限にするこの技法は、スマートメータのようなバッテリ駆動アプリケーションに有用で、バッテリでの動作時間を20年に延長することが可能だという。
また開発ツールである「Power-Aware Precision32」は、無償ソフトウェアであるEclipseベースIEDおよびAppBuilderを備え、電力消費を見積もり、システムの電力消費を最小にするガイダンスを提供する。Power Estimatorは、全消費電流と周辺機能の使用による追加電流をグラフ表示。これにより各周辺機能が直接的に消費する電流値が明確に示されることとなり、全消費電流に対する各周辺機能の電力使用量の割合を知ることが可能となる。さらい構成の変更を自動的に設計に反映し、電力消費を最小にするための各モードを最適化することも可能。
Power Tipsは、電流消費を最小限にするためのソフトウェア構成のガイダンスを提供しており、構成可能なセッティングの上にカーソルをもってくると自動的に、AppBuilderに現れる。電力消費最適化のための情報を得られることで、マイコンの構成にかかわる開発時間を短縮するころが可能で、これにより合理的な周辺機能選択や初期化、ピン配置のカスタマイズなどが可能になるという。
なお、パッケージは5.5mm角のQFNもしくはTQFP。価格は1万個購入時で2.55ドルから。統合型開発キットはLCDなしの「SiM3L1XX-B-DK」およびLCD付きの「SiM3L1XXLCD-B-DK」があり、価格は各99.00ドルとなっている。