「人々を笑わせ、考えさせてくれる研究」に対して贈られる今年の「イグ・ノーベル賞」の音響学賞に、言葉をしゃべっている人に作用させて強制的に発話を阻害する装置「スピーチジャマー(Speech Jammer、おしゃべり妨害器)」を発明した産業技術総合研究所情報技術研究部門メディアインタラクション研究グループの栗原一貴研究員(34)と科学技術振興機構(JST)「さきがけ」の塚田浩二研究員(35)の2人が選ばれ、このほど米ハーバード大学で授賞式が行われた。
この装置は、音声を数百ミリ秒程度の遅延を加えて、話者の聴覚にフィードバックすると、微妙に遅れて届く自分の声に脳が混乱し、話者は正常な発話が続けられなくなる仕組み。肉体的苦痛を伴うことなく話者のみに作用し、話者が発話をやめればただちにその認知的な影響が消失するので、無害だという。
栗原さんと元同僚の塚田さんは、指向性マイクと指向性スピーカーを組み合わせることで、離れた場所から特定の話者の発話を阻害するシステムを1カ月ほどで作り上げた。この装置は、会話のマナーやプレゼンテーションのトレーニングなどにも活用できるという。手元にあるコンピュータで、より手軽に発話阻害効果を体験できる「簡易発話阻害ソフトウェア」も無料公開している。
イグ・ノーベル賞は、米ハーバード大学系の科学誌「ユーモア科学研究ジャーナル」の編集長が1991年に創設した。「イグ」には「反対の」という意味がある。
なお今年の“本家”のノーベル賞は、8日夕方のノーベル医学生理学賞を手始めに、各賞が発表される。(参照:2012年4月13日ニュース【2012年度ノーベル賞の発表日程が決まる】)
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