核融合科学研究所は、海水をエネルギー源とする核融合発電の実現をめざした学術研究に活用するためのスーパーコンピュータ(スパコン)「プラズマシミュレータシステム」の性能を、従来システム比で約4倍となる315TFLOPSに向上させたことを発表した。これにより、複雑な核融合プラズマの挙動解析を、より大規模かつ短期間に行うことが可能になるという。

同研究所は、海水中に含まれるリチウムと重水素を燃料とする核融合発電の実現に向けた研究として、日本が独自に研究を進めてきたヘリオトロンと呼ばれる磁場を用いた「大型ヘリカル装置(LHD)」による高温高密度プラズマの生成・閉じ込め研究やLHDの実験解析および広範な理論・シミュレーション科学研究、そして核融合発電炉を建設するための核融合工学研究を軸に研究を進めてきた。

核融合発電は、原子核と電子がバラバラになり飛び回るプラズマを1億度以上の高温の状態で安定に閉じ込めておく必要があるが、こうした核融合プラズマの複雑な挙動の物理メカニズムの解明、実験結果の解析や予測などにスパコンが活用されている。

今回、性能向上されたプラズマシミュレータは、日立製作所の科学技術計算分野向けスーパーテクニカルサーバ「SR16000モデルM1」が採用。同サーバは1ノードあたりの理論演算性能が980.48GFLOPSであり、新システム全体として総合理論演算性能315TFLOPSが実現されるという。

主記憶容量はシステム全体で40.25TBを実装しており、大容量メモリを必要とするプログラムに対しても、最適な計算環境を実現することが可能。また、省電力性も高く、理論演算性能当たりの消費電力は従来モデル(SR16000モデルL2)と比較した場合で約4分の1程度に削減されたという。さらに、ストレージシステムには、日立のミッドレンジディスクアレイ「Hitachi Adaptable Modular Storage(日立アダプタブルモジュラーストレージ)2300、2500」を採用することで総容量2PBを実現したという。

なお、同研究所では、今後も、総合研究大学院大学の基盤機関として将来の核融合研究を担う人材の育成に力を入れるとともに、大学共同利用機関として国内外の大学や研究機関等と協力し、将来のエネルギー問題の抜本的な解決に向け、安全でクリーンな核融合発電の実現をめざした学術研究を進めていくとコメントしている。

プラズマシミュレータシステムの概要図