去る2012年9月28日に、アライドアーキテクツ株式会社、グランドデザイン&カンパニー株式会社、株式会社モディファイの3社共催にて、マーケティングセミナー【ザ・ソーシャル2012秋】を開催致しました。

本セミナーは、ソーシャルメディアの運用担当者やソーシャルメディアとの連携によって効果を生み出したい広告・広報担当者、最新の情報を得たいマーケッター向けに開催したもので、各社が取り組む様々な「ソーシャル」についての講演が行われました。今回は、その当日の様子をまとめてレポートします!

まず始めに、アライドアーキテクツ株式会社 代表取締役社長 中村 壮秀より、ここ1年で起きている「4つのレボリューション」をキーワードに、開会宣言をさせて頂きました。

ここ1年で起きている4つのレボリューション

1.スマートフォンレボリューション

・国内におけるモバイルデバイスの36%がスマートフォンに。

・今までのガラケーに比べてインターネット利用時間が急激に増加していく。 2.ソーシャルレボリューション

・国内のソーシャルメディア利用者が急増しており5,060万人にも上ると言われている。

・中でも特にFacebookユーザー数の伸びが急速。

・Facebookにおいては、ここ1年で55-64歳のユーザー数が734%伸びたとのデータも出ており、今後さらに伸びが期待される。

3.Facebookレボリューション

・インターネットの世界に実名文化が根付いたことは非常に大きな変化。

・今まで、インターネットは匿名が当たり前であり、インターネット内だけで活躍するようなケースもあったが、今は実社会での活躍がそのままインターネットにも反映されるようになってきている。

・「いいね!」という手軽なコミュニケーション手段により、多くの人を自然と「情報の発信者」に変えてしまったことは非常に大きな変化である。

4.マーケティングレボリューション

・多くの人がソーシャル上で過ごすようになり、企業としてもそこにどうやって入っていくのかが求められてきている。

・従来の広告の概念は「枠を見せる」ものだったが、ソーシャルにおいてはそれは「KY(空気読めない)」。

・会話の中にいかに入っていくかという考え方にシフトする必要がある。

続いて、LINEの快進撃が止まらないNHN Japan、企業のソーシャルプラットフォームを提供する世界的企業セールスフォース・ドットコム、5年も前から社内でソーシャルを活用している日立ソリューションズが登場。それぞれの立場から考える「ソーシャル」について、熱のこもった講演が行われました。

スマートフォンアプリ「LINE」の成長から学ぶ、スマートフォン時代のコミュニケーション戦略

NHN Japan 株式会社 事業戦略室副室長 矢嶋 聡 氏

世界230以上の国と地域で、6,000万人を超えるユーザーに利用されるアプリ「LINE」。ユーザーのマンスリーアクティブ率も86.1%を誇り、1日に10億件ものコミュニケーションが行われているというその快進撃の背景には、「PCではなくSmart Phone」「OpenではなくClosed」「InformationではなくEmotion」に着目した「プロダクト」としての競争力だけではなく緻密に実践したマーケティング戦略もあったと語りました。

参入期、成長期、拡大期の3つの期間で異なるマーケティング施策を

矢嶋氏は、LINE立ち上げから現在に至る約1年3カ月の間には、大きく分けて「参入期」、「成長期」、「拡大期」の3つの期間があり、それぞれに異なるマーケティング施策を実施したと説明します。

●参入期(2011.6~) キーワード:エンゲージメント

この時期はまだ「参入期」であり、サービスとして競争力がない状態。この段階でテレビCMなどのマスマーケティングを実施しても、入ってきてくれるユーザーは「一見さん」で終わってしまう可能性が高いと考えた。

よって、まずはひたすら、ソーシャルでモニタリングを実践。日々「LINE」に関してつぶやかれている情報を収集し、社内に共有。それに基づきサービス改善を繰り返して、ファンのベースを構築できるよう努めた。

●成長期(2011.10~) キーワード:共感、インパクト

ある程度のファンベースができ、競争力がついてきたと判断したタイミングで、全国区でテレビCM放送開始。市場からの信頼を勝ち取り、一気に拡大していく方向性に転換した。

とはいえ、単純にテレビCMをやるだけでは意味がなく、とにかく「インパクト」が大切だと考えた。そこで、一般の主婦、OL、学生をターゲットに、「いつも笑っているベッキーが泣いている」「朝まで話しても無料」というシンプルでインパクトの強いメッセージのものに。

CMを流した結果、それまで首都圏が中心だったユーザー層が地方にも広がり、また、ユーザーの登録数だけでなく、既存ユーザーからの招待数が増えた。テレビCMでやってるアプリということで友達に紹介しやすくなったことが要因。実際に、Twitter等で評判が広がっていることを目の当たりにできた。

●拡大期(2012.1~) キーワード:安心感、信頼感

テレビCM放送後に一般ユーザーが急増、ちょっとした誤解がさらなる誤解を呼んだり、噂話がきっかけで炎上する可能性も生まれたため、積極的にアクティブサポートを実践。カスタマーサポート、開発、企画担当者がリアルタイム連携し、ユーザーのつぶやきにもすぐに対応できる社内体制を取った。今はとにかく、新規のユーザーよりも既存ユーザーへの安心感を大切にしたいと考えている。

マーケティングは空中戦と地上戦へ

そして矢嶋氏は、これからのマーケティングは、「情報の拡散や信頼性担保のためのマスマーケティング=空中戦」と、「ユーザーとのエンゲージメントやリスクマネジメントのためのソーシャルメディアマーケティング=地上戦」の両方をバランスよく実践していくことが求められるのでは?と締めくくりました。

ソーシャルで変わる企業のマーケティングー(そのパワーと課題)

株式会社セールスフォース・ドットコム 執行役員 プロダクトマーケティング 榎 隆司 氏

先日アメリカで9万人のマーケッターを集めたイベント「ドリームフォース」を開催、世界でソーシャルプラットフォームを提供するセールス・フォースドットコム社の榎氏は、「もはやソーシャルは待ったなしの状況である」として、企業がこれからソーシャルに取り組む意義と、今後の課題について語りました。

ソーシャルの嵐が吹き荒れている

1日あたりのTwitterポスト数は約4億件、Facebookへの投稿も約2.5億件、そしてFacebookユーザーは全世界で9億人等、ソーシャルネットワーキングは全てのITカテゴリーの中で最も成長している分野だと言います。企業のマーケティング活動においても、ソーシャルメディアを積極的に活用している企業はすでに78%にも上っており、「ソーシャルはもう待ったなしの状況である」と説明します。

ソーシャルによるマーケティングのパラダイムシフト

インターネット、そしてソーシャルの発展により、これまでの「一方通行、1対多、ターゲティングされていない」マーケティングは、これからは「つながり、情報の透明性、ターゲティングされたメッセージ」を重視するマーケティングへと変遷してきました。

さらに、榎氏は「ソーシャルはマーケティングにカオスを生み出した」と語ります。個人は今まで「顔の見えないデータの集まり」でしたが、ソーシャルにより「もはや個人は顔の見えないデータの集まりではなくなった」のです。

これからのソーシャル時代には、一人ひとりを顔の見える個人として捉え、顧客の声を聞き、関係をつくり、つながり、知見をアクションにつなげ、これまで以上にターゲットができるようになり、まさに「生きたリアルタイムの情報」を取れるようになると説明します。

多くの企業がソーシャルマーケティングと苦闘

ところが、多くの企業がこの「ソーシャルマーケティング」に苦闘している状況だと言います。

・社内の組織が個々に対応しており、複数の部署がそれぞれにユーザーとつながるような状況になりがち。

・キャンペーンが単発に終わっており、顧客エンゲージメントとの統合がなされていない。

・多様なシステムが導入されており、それぞれに連携がされていない。

今後は、ソーシャルメディアを単なる発信ツールと捉えるのではなく、「ソーシャルのつながりから生涯顧客」を生み出せる仕組みづくりが課題でしょうと語りました。

企業内情報共有基盤のあり方-SNSを活用した日立ソリューションズの事例-

株式会社日立ソリューションズ CSR推進部部長 増田 典生 氏

日立ソリューションズの増田氏は、社内におけるソーシャルの活用事例として、企業内情報共有基盤として5年前から活用している社内SNS「SOLNES」の事例を紹介しました。社内SNSに関するお話でありながら、ファンとの「場」としてのソーシャルメディア運営への示唆がたくさん詰め込まれた講演でした。

社員同士が組織・職位を越えて新しい価値を創造できる「場」としての社内SNS

日立ソリューションズでは、まだ「社内SNS」自体がもの珍しい時代であった5年前から、社員間で利用できる社内SNSを立ち上げて運用しています。

・社員が全国に12,000名。自部門に閉じた縦割り業務で、組織を越えたネットワークが希薄だった

・全国で誰が何をやっているかよく分からない

・知りたい情報・知識を持っている社員は全社のどこかにいるはずだが、どこに聞けばよいかわからない

・「想い」や「ジャスト・アイディア」を共有する場がない といった課題を持っていたそうです。

そこで、組織、職位、地域をまたいだ全社レベルでの人的ネットワークの構築促進と、意見を交わし、情報共有し、協働して、新しい価値を創造できる「場」を作るため、社内SNS立ち上げに至ったと説明します。

性善説に立った運用体制で利用を促進

実際の人物として「つながりやすく」、また「炎上しにくい」ことから実名制で運用。

また、

・非業務での利用も許容

・利用時間を限定しない

・運用ルールは3項目のみ(他人の誹謗中傷をしない、著作権を守る、その他は会社規則に準じる) という「性善説」の体制を取ったこともあり、社員の約7割は毎月利用しており、毎日利用する社員も約18%に上るまでになったと言います。

「教えてQ&A」「新規事業アイディア募集」など様々な場面で活用

具体的な活用事例もいくつか紹介されました。

●活用事例1:教えてQ&A

「全社から知恵を借りる」という発想。活性化のための施策として、質問を出させることを促進するのではなく、回答させることを促進した。また、イントラトップ画面の一番目立つところにQ&Aを置き、目を引きやすくした。

●活用事例2:新規事業アイデア募集

既存製品の新しい適用分野アイデアを募集。従来のイントラやメールでの募集の2倍の件数が集まった。

●活用事例3:全社アンケート

全社員へのアンケートを社内SNSを通じて実施。

●活用事例4:ビジネスログを取る

部門やプロジェクト内の情報共有基盤として利用。従来のメールや、ファイルサーバーによる情報共有と比べ、

・全員で情報の同時共有、活用が可能(みんなでコメントしあう)

・最終成果とそこへ至ったプロセスを同時管理できる

・検索、再利用が容易

・対象メンバーの変更に柔軟に対応できる といった利点があった。

●活用事例5:社内でのプライベートなコミュニティー

子育て情報交換や、いらなくなったものの物々交換等のコミュニティーが形成されて盛り上がっている。

コミュニティーを盛り上げていくために大切なこと

今でこそ活発に利用されている社内SNSですが、当初は盛り上げるために腐心したそうです。その時に一番心強かったのが「パワーユーザー」の存在でした。パワーユーザーは、社内SNSのあり方や機能に関してとても厳しく細かい一方で、一度味方になってくれると周囲への働きかけも自ら実施してくれたと言います。その為、パワーユーザーには一般ユーザーより前に機能をプレ・リリースしたり、密にコミュニケーションを取るように努めたそうです。一方で、社内SNSを「なじみ客だけの喫茶店」にしないよう、ある程度数を集め、多様性を担保することも大切だと説明します。

また、理想的な社内SNSのあり方として、

・人と人が出会い、意見を交わし、新しい気づきや発見を得られる場=コミュニケーション

・個人や組織が持つ情報、知識を蓄積し活用できる場=ナレッジスペース

・ナレッジを活用し、協働して新しい価値を生み出す場=コラボレーション の3つを良いバランスで配分していくことが大事であろうと語りました。

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