新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)は、2008年度に開始したグリーンITプロジェクトにおける成果の一つとして、省エネ技術を結集した次世代モジュール型データセンターを構築したと発表した。
これまで開発してきた省エネ基盤技術である、高電圧直流電源技術、サーバ液冷技術、グリーンクラウド運用技術、データセンターモデリング・評価技術に、今回新たに開発した外気導入技術(特許出願中)を組み合わせ、エネルギー利用効率を最適化し、本事業の目標とした総消費電力を従来に比べ30%削減(比較のために構築した従来モジュール型データセンターの総消費電力28kWが次世代型で19.6kW以下に)できることを検証する。
また、商用電力の供給量が制限された際に、制限内で効率良くデータセンターの運用が行える運用技術も開発する。
従来、データセンターの建設では、IT機器、空調設備、電源設備、建物が、それぞれ異なる事業者によって異なる目標が設定され設計・製作・構築されてきたため、データセンター全体としてエネルギーを効率良く利用できていなかったという。そこでNEDOでは、省エネ技術を結集したことで大幅に消費電力を削減でき、かつ、節電運用が可能な次世代モジュール型データセンターを産業技術総合研究所(産総研)つくばセンター内に構築した。
開発したモジュール型データセンターは、「液冷を用いたファンレスサーバー」、「外気導入によるエアコンレスデータセンター」、「直流電源供給と電源アダプティブ制御技術(運転台数制御)」、「データセンターの省電力運用と節電対策」、「次世代モジュール型データセンターの構築と評価実験」が特長となっている。
「液冷を用いたファンレスサーバー」では、空気よりも熱伝導率が高い液体を用いて、熱をサーバ室内に排出せずに効率的に除去する手法を採用。今回、SOHKiがNEDOグリーンITプロジェクトの一環として開発した液冷ジャケットを既成品サーバに装着し、大部分の熱を冷却液によりサーバから除去することにした。具体的には、サーバを収納したモジュール内の床下から、ラックを通してサーバへ冷却液を循環させ、クーリングタワーで冷却された水と熱交換する仕組みを構築している。
外気導入によるエアコンレスデータセンターでは、サーバからモジュール内に排出される熱をモジュールの外に排出するために、外気を利用することとし、産総研とNTTファシリティーズは、グリーンユニットと呼ぶ外気導入装置を設計。このユニットは、モジュール内に大型ファンで空気を送り込み、気圧の差によって空気が流れるように設計されている。
グリーンユニットは、内部に気化冷却器、熱交換器、除湿加湿器をとりつけ、外気の環境条件に応じてサーバに必要な温度・湿度・風量の空気を送ることを可能にした装置だという。夏は、外気を気化冷却により温度を下げて供給し、サーバからの熱を含んだ空気を直接外部へ放出。冬は、サーバからの排気を循環させてサーバに給気するとともに、グリーンユニット内で、外気と熱交換を行う。この装置により、エアコン(空調機)を使わずにサーバを冷却でき、また、大型ファンで動作させるため、冷却にかかる電力を大幅に削減することが可能だという。
直流電源供給と電源アダプティブ制御技術(運転台数制御)では、NTTファシリティーズと三菱電機、長崎大学が、電源システムの直流化によりシステム全体の変換段数を削減するとともに、約380Vの高電圧化により電源システムの効率を向上させた。さらに、IT機器の消費電力に応じて電源ユニットの運転台数を最適制御する電源アダプティブ制御技術を確立し、常に運転効率の高い状態を維持することを実現した。
今後の予定として、今回構築したデータセンターでクラウドサービスやWebサービスなどをつくば市で1年以上運用し、実際的な運用状態において消費電力削減の効果を評価する。また、1年間運用することで、つくばにおける外気環境条件での動作および削減効果評価を行うとともに、つくばでは自然に形成されないさまざまな外気環境下での評価も行い、運用のガイドライン開発やノウハウの蓄積などを進める。
なお、本プロジェクトの運用は、新エネルギー・産業技術総合開発機構、産業技術総合研究所、NEC、NTTファシリティーズ、三菱電機、長崎大学で実施される。