NTT(本社、東京都千代田区)とフジクラ(本社、東京都江東区)、北海道大学、デンマーク工科大学の研究チームは、2時間のハイビジョン映画5,000本を1秒で伝送する速度に匹敵する毎秒1ペタビット(1ペタは1テラ〈兆〉の1,000倍)の超大容量データを、光ファイバー1本で52.4キロメートル伝送することに成功した。オランダ・アムステルダムで開催された欧州最大の光通信国際会議「ECOC2012」で発表した。
研究チームは、デンマーク工科大学の盛岡敏夫教授(元NTT先端技総合研究所)が提唱する「空間多重光通信技術」の研究を進展させて、1本の光ファイバーに12個のコア(光信号の通路)をほぼ同心円状に配置したマルチコア光ファイバーを開発した。同心円状とすることで、コア間の光信号が漏れて、互いに交じり合って起きる伝送効率の劣化(クロストーク)を極力抑えた。
さらに、マルチコアそれぞれの光信号を単芯ファイバーに変換する入出力接続技術を開発した。またデジタル信号を、光の波としての性質(位相・偏波)を用いて多数の信号状態にして伝送する「偏波多重多値QAM(Quadrature Amplitude Modulation)デジタルコヒーレント技術」を応用することで、1波長当たりの伝送効率を従来のオン・オフ変調技術よりも約10倍以上、大容量化できる光伝送技術を実現した。
今回の成果は、マルチコア光ファイバーを用いた、これまでの伝送容量の世界記録「毎秒305テラビット、伝送距離10キロメートル」を大幅に更新したもので、世界で初めて、1本の光ファイバーでペタビットの大容量光伝送を実現した。現在実用化されている光ファイバーの伝送性能を1,000倍以上、飛躍させることができる要素技術になるという。
今回の研究開発の一部は、独立行政法人・情報通信研究機構(NICT)の委託研究の成果を用いた。
関連記事 |