STMicroelectronicsは、9月10-13日の期間で米国にて開催された「Solar Power International 2012(SPI 2012)」において、SiCデバイスに関する進捗として、1200V耐圧のSiCダイオードを発表した。同製品を用いることで、太陽電池モジュールのDC-DC昇圧コンバータおよびDC-ACインバータで用いられている現行のSiダイオードに代わり、低電圧出力を高品質AC電源に変換することができると同社では説明している。
太陽光発電システムの電力変換アプリケーションをターゲットとしているSiCは、一般的なSiバイポーラ・ダイオードよりも、速度・効率・性能面において優れている。SiCダイオードは、導通および非導通状態のスイッチングの高速化が可能で、スイッチング時に生じる逆回復電流の影響を低減し、一般的なSiバイポーラ・ダイオードの電力損失を最大70%低減することができるほか、幅広い温度範囲にわたって高効率を維持し、システム動作周波数の高速化・最適化が可能だという。
同SiCダイオードを用いた試験では、高負荷・高周波数 動作時でも、インバータの効率が全体で2%向上することが確認されたという。この効率改善は、住宅用太陽光発電システムや太陽光発電所等の設備でインバータを 耐用年数まで使用した場合、数MWhの電力の節約につながることになるという。
また同社はSiC MOSFETプログラムの進捗についても発表している。SiC MOSFETは、太陽電池用インバータにおける高電圧Si IGBTの代替製品として期待されているデバイスで、IGBTの電力損失を少なくともSi比で50%低減することが可能なほか、特別な駆動回路を必要とせず、より高い周波数での動作が可能という特長を有する。そのため、システム設計者は、他の電源部品を最小化することができ、コスト削減や小型化、および電力効率の向上を図ることができるようになるとしている。
なお同社では、SiC MOSFETおよびSiCダイオードのアプリケーションとして、電力使用量が大きいサーバ・システムやデータセンター、および電気自動車のモータ駆動部なで使用される大型電源なども対象に含まれるとしている。