精子を作れないマウスの精巣組織を体外で培養し、正常な精子を形成することに横浜市立大学学術院医学群の小川毅彦准教授(泌尿器病態学)や理化学研究所バイオリソースセンター遺伝工学基礎技術室の小倉淳郎室長などの研究チームが成功した。
研究チームは、精巣内に精子の元になる精原細胞はあるが、精子形成を促すための栄養や成長因子を作る「セルトリ細胞」が働かない不妊マウスを使った。このマウスの精巣組織を取り出し、精子形成を促す「KITL(c-kit ligand)」という幹細胞因子を添加して培養し、さらに相乗効果のある「CSF1(colony stimulating factor-1)」というマクロファージ刺激因子を加えたところ、組織内で精子細胞が形成された。この精子を顕微授精によって卵に注入し妊娠させた雌マウスから仔マウスが生まれ、さらにその仔マウスも正常に成長して、自然交配によって孫世代の子孫もできたことから、正常な精子であることが確認できた。
ヒトのカップルの10-15%が不妊で、そのおよそ半数は男性側に原因があるといわれる。男性不妊の原因のほとんどは精子形成障害によるが、有効な治療法は確立されていないという。今回の技術をそのままヒトに適用することはできないが、将来の不妊治療への道筋を示したものとして意義があるという。
今回の研究は、文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究「配偶子幹細胞制御機構」および基盤研究(B)、若手研究(B)、横浜市立大学先端医科学研究センター研究開発プロジェクト、横浜総合医学振興財団からの研究補助金によって行われた。
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