ルネサス エレクトロニクスは9月12日、ワイヤレス給電向けに、近距離無線通信のNFCを用いたワイヤレス給電システム開発したこと、ならびにNFCマイコン「RF20」、送電IC「R2A45801」および受電IC「R2A45701」を発表した。

ワイヤレス給電は、携帯機器の充電時に電源ケーブルをつなげる煩わしさを無くし、さらに機器本体側に充電用コネクタを設置する必要性が無いため、接触不良などの不具合を減らすことができるため、一部のスマートフォンなどでの採用がすでに始まっている。既存のシステムでは、受電側アンテナと送電側アンテナを組み合わせたシステムが一般的だが、受電側の携帯機器にはアンテナ追加によりスペースが増加するのに加え、両アンテナの位置ずれによって電力伝送効率が落ちるため、システム設計上で制約を受けてしまう。また、給電範囲が狭くアンテナ位置が合わないと充電ができないこともあるため、位置合わせをする必要があり、デザイン設計の自由度が失われる課題があった。

そこで今回、同社は既存のNFCマイコンの技術を活用し、ワイヤレス給電にもNFCによる通信を活用することによりアンテナ1つで送受電が行え、信頼性も向上可能なNFC方式ワイヤレス給電システムを開発したほか、同システムを容易に携帯機器などに組み込むことができるよう、NFCマイコンと電源技術をベースとした受電ICおよび送電ICを製品化し、システムの主要部品をトータルキットとして提供することを決定したという。

同NFC方式ワイヤレス給電システムソリューションの特長は大きく4つ。1つ目は、NFC方式を採用することで1つのアンテナで送受電を実現できること。スマートフォンに内蔵されているNFCのアンテナを流用することで、受電用のアンテナを新規追加する必要がなくなるため、機器の小型化や薄型化が可能となる。

2つ目は、給電範囲の拡大を実現したこと。NFCを用いた独自技術により、給電範囲を10cm程度とることが可能となった。これにより位置ずれに強いワイヤレス給電システムを提供できるようになるため、従来は事実上限定されていた携帯端末の受電位置を自由にできるようになり、端末のデザイン性を向上することが可能になるという。

3つ目は安全性の高いワイヤレス給電システムを構築することが可能になるということ。NFCにより相互通信が可能なため、給電開始前に給電可能な機器か否かを認証できるようになり、これにより安全なワイヤレス給電を実現することが可能になるという。

そして4つ目はNFCマイコン「RF20」を活用することでワイヤレス給電と従来の非接触ICカードなどの2つの用途に対応できるようになったこと。同マイコンはNFC標準規格に準拠しており、ワイヤレス給電のみでなく、従来の非接触ICカード用途などにも使用が可能だ。そのため、携帯端末のさらなる小型化に貢献できるという。

なお、同社では、同ソリューションをNFCフォーラムのWireless Charging Task Forceにて提案するなど、NFCによるワイヤレス給電システム普及活動に取り組んでいく方針としている。

サンプル価格は「RF20」が500円、「R2A45801」が500円、「R2A45701」が500円で、3製品とも2012年11月よりサンプル出荷を開始する。量産はNFCマイコン「RF20」は2013年1月より開始し、2013年6月には月産100万個体制まで引き上げる予定。送電IC「R2A45801」と受電IC「R2A45701」は2013年3月から行い、2013年12月にはそれぞれ月産100万個体制まで引き上げる予定である。

ルネサスのNFC方式ワイヤレス給電システムソリューション