太陽表面で起きているガスの噴出や磁場の揺れなどの類似現象を地上の実験装置で再現することに、宇宙航空研究開発機構(JAXA) 宇宙科学研究所の西塚直人研究員と東京大学大学院 新領域創成科学研究科の小野靖教授らのチームが世界で初めて成功した。ダイナミックな太陽活動の様子や謎とされる「コロナ加熱」などの解明につながるものと期待される。
太陽表面で起きているガスの噴出や磁場の揺れなどの類似現象を地上の実験装置で再現することに、宇宙航空研究開発機構(JAXA) 宇宙科学研究所の西塚直人研究員と東京大学大学院 新領域創成科学研究科の小野靖教授らのチームが世界で初めて成功した。ダイナミックな太陽活動の様子や謎とされる「コロナ加熱」などの解明につながるものと期待される。
太陽(半径約70万キロメートル〈km〉)の温度は、熱源となる中心核では1,500万℃もあるが、表面では6,000℃に下がり、表面上空の「彩層」(厚さ約2,000 km)を過ぎた外側のコロナでは100万℃以上に高まるといった逆転現象がみられる。この「コロナ加熱」の問題は長年の太陽研究の課題とされているが、6年間に及ぶ太陽観測衛星「ひので」の観測により、彩層での活動現象が重要な役割を果たしていることが分かってきた。
研究チームは、東京大学にあるプラズマ実験装置「TS-4球状トーラス実験装置」を使い、彩層での活動現象の再現に取り組んだ。その結果、陽子と電子からなるプラズマのガスの温度を1万℃から3万℃に急速に加熱したり、ガスを時速2万kmの速さで噴き出す小爆発(彩層ジェット)の様子、加熱に伴って発生した磁場の激しい“揺れ”などの現象を観測することができた。
実際の彩層ジェットの速さは時速10万-70万kmもあるなど、太陽で起きている現象とは桁違いの結果だが、「コロナ加熱」の加熱源とも考えられている磁場の揺れを直接発生することができたことは、貴重な結果だという。
研究成果は米国の専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル(The Astrophysical Journal)」(10日、オンライン版)に掲載された。
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