南極にすむ線虫は凍結・乾燥に耐えて、25年以上も生き延びる。温度を上げたり、水を加えるだけで元通りに生き返るが、その際に、ゆっくり凍らせたり、ゆっくり乾燥させた方が生存率が高まることが、情報・システム研究機構(ROIS)新領域融合研究センターの鹿児島浩特任研究員や国立遺伝学研究所・生物遺伝資源情報研究室の小原雄治教授、国立極地研究所の神田啓史特任教授などの研究チームが明らかにした。
線虫は土壌にいる体長1ミリメートルほどの細長い糸状の生物。研究チームは、1983年10月に南極の昭和基地周辺で採取され、そのまま25年6カ月間、零下20℃の温度で凍結保存されていたコケ類のサンプル中から見つけ、よみがえらせることに成功した。生き返った線虫(Plectus murrayi)は、水と寒天だけの極めて貧栄養の培地に生きる南極由来の細菌をエサに増やすことができ、逆に、栄養の多い培地では死んでしまったという。
こうして数を増やした線虫を使い実験した結果、零下5℃で凍結・保存し、再び温度を上げて回復させた場合の生存率は約85%、零下20℃では約25%、零下80℃では20%強だった。零下5℃で凍結後、零下20℃で保存した場合は生存率約55%、零下5℃で凍結後、零下80℃で保存した場合の生存率は20%弱と、ゆっくり凍結の方が生存率は高かった。また、相対湿度98%でゆっくり乾燥させてから、加水し回復させた場合の生存率は75%近くだったが、相対湿度76.6%でやや早く乾燥させた場合の生存率は50%ほどに低下した。除湿剤のシリカゲルで相対湿度0%の条件をつくり、急速に乾燥させた場合の生存率は0%に近かった。
研究チームはさらに、線虫の持つ凍結耐性、乾燥耐性の遺伝子解析などにも取り組んでいる。研究成果は「CryoLetters」(Volume 33, No 4 July/August 2012)に発表した。
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