ニチモウバイオテックスは9月5日、東京農工大学 大学院農学研究院の松田浩珍 教授らが発見したアトピー性皮膚炎自然発症モデルマウスである「NC/Tndマウス(旧名:NC/Ngaマウス)」を用い、自社で開発した麹菌発酵大豆培養物製品「ImmuBalance(イムバランス)」の有効比較試験を行った結果、皮膚炎症状の悪化抑制および引っ掻き行動数の増加抑制が認められたほか、皮膚の水分蒸散量(TEWL)にも低下が認められたことを発表した。ImmuBalance投与群は、0.1%FK506軟膏塗布薬群とほぼ同等の傾向を示した形である。研究の詳細な内容は、国際皮膚科学関係専門医学誌「Journal of Dermatological Science」2012年8月号に掲載された。

ImmuBalance。脱脂大豆をニチモウ独自の麹菌発酵技術によって製造した麹菌発酵大豆培養物だ

現在の日本では全人口の20~30%が何らかのアレルギーを持つといわれ、その数は年々増加している。特に、喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどのアレルギー疾患は、生活の質を低下させる深刻な社会問題となっている状況だ。

アレルギーに対してはこれまで、さまざまな試みがなされてきたにもかかわらず、根治療法は未だ見出されていない。ステロイド剤を中心とする医薬品は、副作用が懸念されるため妊婦や乳幼児・高齢者などへの投与は慎重にならざるを得ないという問題がある。そこで、副作用のない安全かつ有効な天然成分由来の物質に注目が集まってきており、近年は、「プロバイオティクス」が有害なバクテリアの抑制、食物の消化/吸収の助成、抗菌性活動、腸管免疫の改善など宿主の健康に重要な役割をしていることが示唆されるようになってきた。

ImmuBalanceはプロバイオティクス効果だけではなく、有益な腸内細菌の発育と活動を高めることによって、宿主の健康に有利に作用するのプレバイオティクス効果も有しているという。また、麹菌発酵の工程で新たに生成した物質が保健効果を与えるというバイオジェニックス効果も有していると同社では説明している。今回の研究は、アトピー性皮膚炎の症状を緩和することできれば社会的意義が高く、そうした理由から、農工大と共同で、アトピー性皮膚炎に対するImmuBalanceの機能性に関する基礎研究が行われた形だ。

試験で使用されたNC/Tndマウスは、松田教授らが発見したアトピー性皮膚炎自然発症モデルマウスであり、今回得られるデータは今後の臨床試験へ向けての信頼性に足る基礎データを得るという観点からも有用だという。

研究の結果、アトピー性皮膚炎におけるImmuBalanceの使用は、皮膚炎症状の悪化を抑制し、さらに引っ掻き行動やTEWLも減少傾向となることが確認された。その効果は、抗アレルギー薬とほぼ同程度に皮膚炎症状スコアや引っ掻き行動数を低下させるのみならず、皮膚バリア機能の改善効果は軟膏塗布薬に比べて優れていることが示唆された。

松田教授らは、「食事の欧米化がアレルギー罹患率の増加の原因だと思う。日本の伝統的な食文化の精髄である麹菌発酵大豆食品が、経口で抗アレルギー薬とほぼ同程度に皮膚炎症状スコアや引っ掻き行動数を低下させ、また皮膚バリア機能の改善効果は抗アレルギー薬よりも優れているということは、アレルギー疾患全般にとって福音だ」とコメントしている。

ImmuBalanceは、プロバイオティクス作用だけではなく、プレバイオティクス作用および直接生体に作用するバイオジェニックス作用を有していることから、それら3つの作用の相乗効果によりアレルギーから脱感作(過敏性を除去)させることが考えられるという。このアレルギー脱感作は、一般の乳酸菌製品より顕著な効果を期待できるとしており、同社では、この新規の機能性素材を、花粉症、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎などアレルギー疾患に困っているヒトに届けることを考えていきたいとしている。