東芝は8月16日、レアアースの中でも特に希少なジスプロシウムを一切使用しないモータ用の高鉄濃度サマリウムコバルト磁石を開発したと発表した。モータの実使用温度域である100℃以上において、耐熱型ネオジム磁石と同等以上の磁力を持つという。

耐熱性が要求される自動車・鉄道車両の駆動モータや産業用モータは、磁力の高いネオジムの一部をジスプロシウムで置き換えた耐熱型ネオジム磁石が一般的に使用されている。しかし、ジスプロシウムの鉱山が地球上の一部地域に集中しているため、昨今、価格高騰や輸出規制が課題となっており、ジスプロシウムを使用しなくても実使用温度域となる100℃以上で、高い磁力を持つ高性能磁石の開発が望まれていた。

今回、ネオジム磁石に比べ磁力が劣るサマリウムコバルト磁石に、独自の熱処理技術を適用し、100℃以上のモータの実使用温度域では耐熱型ネオジム磁石と同等以上の磁力をもつ高鉄濃度サマリウムコバルト磁石を開発。磁力を増大させるために鉄の配合量を従来の15%から20~25%(重量比)に増やした後に、焼結時の温度、時間、圧力の最適化などの熱処理条件を工夫することで、磁力の阻害要因となっていた酸化物や高銅濃度異相を低減させた。

また、同開発品を搭載したモータは、耐熱型ネオジム磁石を搭載したモータと同じサイズで、同等の性能があることが確認されており、自動車・鉄道車両・工作機械・エレベータなどで使用される耐熱性が高く、高性能かつ小型であることが求められる用途に適しているとした。

東芝では、今回開発した高鉄濃度サマリウムコバルト磁石を2012年度末の市場投入を目指すという。